タイル剥落

当事務所で相談に乗っている建物で、外壁タイルの剥離(落下)の案件がたくさんあります。
相談も定期的にあります。実際に裁判等で争っている事件も抱えています。

建物の外壁タイルが広範囲で浮き、剥落してしまうと、直下の物を壊したり、場合によっては人にあたって大怪我につながるということも見聞きします。

国交省では、不特定多数の人が利用する特殊建物の定期報告(建築基準法12条)で、外壁タイル張り建物においては、竣工後または外壁全面改修後10年を経過した建物では、タイル面全面の浮き調査を義務付けています。実際に全面調査をするとなると、足場を組むかゴンドラなどで調査をする必要があり、建物所有者や管理者にそれ相応の負担になります。赤外線カメラでタイルの浮き調査をする方法もありますが、条件が整わないと確実に全面ができるわけではありません。

タイル貼りというのはなかなか厄介な建物です。
ところで、なぜタイル貼りなのか、を考えてみましょう。

マンションなどでタイル貼りが一気に採用されるようになったのはここ10?15年程度のことでしょうか。それ以前のマンションは、コンクリートに凹凸のパターンを付けるか梨肌のような塗装をすることが一般的でした。塗装のマンションは、タイル張りのマンションに比べて少し安っぽく見え、汚れも目立ちやすいので、だんだんとタイル張りが主流になってきた、ということでしょう。

タイルの起こりは?と、ひも解いてみると、元々はスライスレンガと呼ばれていました。つまり、レンガを薄くスライスしたものです。それを外壁にぺたぺたと貼っていったのがタイルの始まりです。つまり、「レンガ建物のかわり」だったわけです。

レンガ建物は、その名の通りレンガブロックを積んでいきます。そのためレンガ建物が崩壊することはあるかもしれませんが、レンガ自体がぼろぼろと落ちるということはありません。ところが、これがタイルになった瞬間、タイルの施工が悪かったり、タイルの裏側に水が回ったりすると、タイルが浮き、落下につながります。

ところで、外壁タイル張りの建物は、圧倒的に日本が多いです。外壁にタイルを使うのは落下のリスクがなくならないため、非常に使いにくい、というのが一般的な感覚です。ところが、日本の場合、特に分譲マンションにおいては、タイル建物が非常に多いです。それは高級に見せることができる、塗装よりも竣工時のミスが目立ちにくい、といった売り手側の都合が透けて見えます。

前述のとおり、外壁タイル建物を適切に維持管理するのは、かなり大変で費用がかかります。その管理を怠ってしまい、一度事故になってしまうと、莫大な補償を負うことになる可能性もあります。見方によっては非常に厄介なものです。

ただ、最近はかなり改良され、接着剤で止めるタイル施工技術も確立されてきました。ただ、まだ長期に渡る施工実績がないので、10年20年経った時に、接着効果が変化したり、他の未知な問題が発生したりする事も考えられます。

ちなみに、私は2階以上の外壁にタイルを使った設計をしたことがありません。ヨーロッパの設計者の感覚では、タイルは床か内壁につかうもの、といいます。非常に共感できるところです。

タイル剥落の事例