相変わらずリフォームにまつわる事件が減りません。
6/20にもこんな事件がありました。
悪質リフォーム:元大阪支社長ら5人逮捕 特商法違反容疑
毎日新聞 2012年06月20日 20時58分
虚偽の説明で必要のない住宅リフォーム工事契約を結んだとして、大阪府警生活経済課などは20日、リフォーム会社「WORLD HOUSE」(大阪市天王寺区)の元大阪支社長、芝池夏輝容疑者(26)=東大阪市長田西2=ら5人を特定商取引法違反(不実告知)の疑いで逮捕した。同社は大阪や兵庫、奈良の高齢者ら計約210人と契約し、約5億円を売り上げたという。府警は詐欺容疑での立件を視野に捜査を進める。
逮捕容疑は昨年11月、同府大東市の男性(71)宅を訪問し、「コンクリートの基礎が弱いので家が倒れる」などとうそをつき、約135万円の工事契約を結んだ、などとしている。府警によると、芝池容疑者は「うそをついたり、客の不安をあおって契約していない」と否認している。
大阪府は10年3月、同社の前身とみられる大阪市のリフォーム会社「World Peace」に対し、悪質な勧誘をしたとして同法に基づき9カ月間の業務停止命令を出している。両社は役員や従業員がほぼ同じで、府警は命令後に新会社を設立したとみている。【服部陽】
また、先日私が相談を受けた悪質リフォーム裁判(民事)も、相手業者は最初の1回だけ反論してきたが、その後裁判に出席もせず判決でほとんどの主張が認められました。が、ほとんど回収の見込みがない・・・との残念な結果。
こちらは「瓦屋根がずれている」と言われ「ラバーロック」なるほとんど無意味な(でもこの手のリフォームではよく行われる手法)工事をされ、高額な費用を取られた上に、漏水を誘引してしまい、今まで雨が漏っていなかったものが業者の言われるまま工事をしたことで雨が漏るようになってしまったという、何ともかわいそうな事件。
瓦屋根はおいているだけが本来の姿で、ずれたり割れたりしない限り漏れるものではありません。というか、漏れないように重ねられています。そこを逆にシールしてしまうと水の逃げ道が無くなり水が内部に入り込みます。ここが「ラバーロック」の無意味なゆえんです。「ラバーロック」とは簡単に言うと瓦の重ね合っている部分をゴム製の接着剤のようなもので止めてしまう、というものです。
しかも、こういったリフォーム業者(実態は建築業者ではないことがおおい)は、素人であることが多く、まして瓦屋さんではないので、瓦屋根の歩き方を知りません。つまり、素人が屋根を歩き「施工らしき事」をしたことで瓦がかえってずれてしまい、それが雨漏れの原因にもなったわけです。
当事務所では、現在も「リフォーム詐欺」的な相談をいくつか受けています。 過去にも何度も同じような相談がありました。
印象に残っている事件としてはこんなのもあります。
サラ金と悪徳リフォーム結託 認知症女性の自宅担保に アイフル、業者に融資
引用は手元の毎日新聞から
大阪府泉南市のリフォーム業者が同府内に住む認知症(痴呆(ちほう)症)の女性(75)の自宅に相場より 高額な外壁工事などを施したうえ、女性宅と土地を担保に消費者金融大手「アイフル」(京都市)から金を借 り入れる契約を結んだとして、女性側が業者とアイフルの社員らを相手取り、抵当権の抹消や慰謝料など計 約500万円の支払いを求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。業者は、女性を連帯保証人にしてアイフルと 契約を結んでいたという。女性側は「アイフルは女性が認知症と知りながら契約を結んだ」と主張している。
訴状によると、女性は木造2階建ての自宅に一人で暮らしていた。90年ごろからリフォーム業者が出入り するようになり、最近は(1)自宅1階の段差をなくす「バリアフリー工事」(03年10月、81万円)(2)外壁塗装 工事(同、286万円)(3)玄関サッシ取り換え工事(04年11月、85万円)を施した。
女性は進行性の認知症で、親族が1級建築士に工事費の鑑定を依頼したところ、(1)は49万円、(2)は 約8分の1の36万円、(3)は約4分の1の22万円で済むはずの工事だったことが判明したという。
さらに業者は04年9月、アイフルと借り入れ限度額300万円の賃借契約を締結。その際、女性に連帯保証 と自宅、土地を抵当に入れる契約書に署名、捺印(なついん)させた。契約の場には、アイフルの担当社員も 立ち会っていたとしている。
女性側は訴状で、「(女性は)年金暮らしで返済能力を欠いており、連帯保証人として明らかに不適格者だ った。認知症で意思能力を喪失していた原告に契約を結ばせた行為は違法」と主張している。女性の代理人 弁護士によると、業者の名刺に書かれた電話番号に連絡しても不通で、連絡が取れない状態が続いている。
アイフル広報部は「事実を確認できない」と話している。
この事件もかわいそうな事件でした。これはもう7年以上も前の話ですし、記事に出てくる女性はすでに他界されています。でも、このときの依頼者であった親族の女性とは未だにおつきあいをしています。
リフォーム詐欺は一人暮らしの高齢者が狙われやすいです。親しげに声をかけられ、話し相手になってくれます。しかし、それも彼らの手です。気を許した瞬間につけ込んできます。しなくてもいい工事を進められたり、10万円の工事を100万円請求したり、平気でそんなことをしてきます。
リフォーム業者は基本的に誰でもなります。建築業法という法律で規制がありますが、建設業許可が必要なのは500万円以上の工事をする場合で、それ以下の場合は原則不要です。つまり、500万円以下のリフォームには許可は不要なのです。それは小さな工務店や一人大工などを守るためにあるルールですが、それを悪用されています。
今日から「リフォーム業者です」と言えば誰でもなれるということです。つまり、建築関係者でなくもいいのです。そこがミソで、一昔前なら訪問販売で水や羽毛布団を売っていた人たちが、訪問販売のノウハウをもってリフォーム業界に来る業者がいると言うことです。
ただ、この「訪問販売」スタイルというのがポイントで、訪問販売は特商法(特定商取引に関する法律)でクーリングオフが認められる契約です。厳密には条件がいろいろとありますが、契約後8日以内であれば無条件で解除できます。
ところが、悪徳業者もそこを知って、次なる対策をしてきます。それは、契約後8日以内に工事をやってしまうのです。ひどいときは契約した次の日に工事に来ます、といいます。工事をしてもクーリングオフはできるのですが、工事をしまえば人間の心理として費用を払わないと、となります。善良な人ほどそう思うと思います。
よく考えてみてください。普通の業者であれば「明日工事します」ってできると思います。早くても1週間、忙しい業者であれば2~3週間待つことはざらです。こちらもそれを見越して業者とつきあいます。「明日工事します」という業者は要注意、ってことです。逆に言うとどれだけ工事をせかされても「1週間後にお願いします」という余裕があればこういったトラブルに巻き込まれることはありません。 まともな業者なら「明日しましょう」とは言いません。
それと、リフォーム詐欺は「だまされているかも」と思ったとしてもなかなか表には出てきません。一人暮らしの高齢者は、親族や子供達に知られるのを極端に恐れる傾向があります。私はこういったリフォーム詐欺で知り合った方には、「次にリフォーム業者がきたときには、「息子に聞いてみます」といっていったん追い返してください。そのときに私に電話してきてもらっても結構ですよ。」と言っています。業者も親族が出てくるのが一番面倒なので、次の営業はしてこないものです。
本当は設計事務所が真剣にリフォーム需要と向き合っていないから、こういった悪徳業者がのさばっているのだと思います。って、事は以前にも書きましたので、リンク先をご覧ください。
リフォームを考えてるのでしたら、一度設計事務所に聞いてみませんか。やっぱり工事をやめることになったとしても、良心的な設計事務所は決して怒りませんから(笑)
■関係リンク■
●設計事務所って敷居が高いのか? 2005.08.03
●補助金に絡む悪徳業者 2009.11.26