設計事務所って敷居が高いのか?

今日はちょっとマンションの話しは一休み。
なかなか進まずにいらいらしておられる皆様すみません。ゆっくり見守ってください。
お急ぎの方は直接ご連絡ください。

最近はアスベストが世の中を騒がせていて、すっかりなりを潜めてしまった”悪徳リフォーム”事件ですが、別になくなったわけではありません。未だにだまされれ続けている人がいるでしょう。


で、今回はこの事件の背景に迫ってみたいと思います。という程かっこよくはないのですが。


いきなり結論を言い切ります。「設計事務所が悪い!」
「え?リフォームの話しなのに何故設計事務所が出てくるの?」と思われるでしょうから、順に追ってお話しします。別に風が吹いたら桶屋が儲かる的な理論ではありませんのでご心配なく。


もし、あなたの家に「近くの工事をやっているんですけど、お宅の屋根相当ひどいので一言お知らせしようと思ってきました。近くを工事しているので、今だったら○○万円でやってあげますよ。市価の半額ぐらいですよ。」という飛び込み営業があったとします。実際にこの手法がおおいらしい。


あなたはどうしますか? 「う~ん、ちょうど傷んできた頃だし、それっぽいメンテナンスいままでやってこなかったし、安いって言ってくれているし、いい人そうだし、う~ん、う~ん」と悩まれるのでしょうか。


そしてそう思いながら心のどこかで、「誰か専門的なことが分かる人に聞いてみたい」と思っているのではないでしょうか。誰かに聞いて教えてもらいたい、と思うのではないでしょうか。
少し前から医療の世界でも「セカンドオピニオン」が話題になっています。ある医者に診断してもらったうえで、別の医者にも診断してもらい診断結果や治療方針などについて多角的に検討する方法です。セカンド(2番目)のオピニオン(意見)という意味です。
建築の世界も、言わずとしれた非常に複雑な世界であり、専門的な知識や技術が要求されます。そんなときに、「ちょっと誰かに相談してみたい。」と思ったときにあなたなら誰に相談しますか?


まぁ、親兄弟親戚といったところが定番でしょうか? 近所の人? そういえば向かいのご主人建築関係って言ってたよね、大工さんだっけ左官屋さんだっけ?その人に聞いてみようかしら、なんて。本当に信用できる人であれば誰に聞いていただいても結構です。その人に背中を押してもらうのも、引き留めてもらうのも、信用していればこそ成り立つ関係です。


でも、親兄弟親戚ましてや近所にもそういった人がいない場合は、結局ひとりで抱え込み、その弱みにつけ込み、悪徳業者が心の闇に侵入してくるわけです。


と一般的にも多くの人がこう感じるんです。そう想定して私も書いているのです。
そして、悲しいかなここへ「設計事務所」という”(本来あるべき本当の)専門家”がおよそ登場しないのです。
私はこのホームページで「設計事務所の役割」や「設計事務所のあり方」についていろいろなところで述べています(最後部に参考URL)。簡単におさらいしますが、本来設計事務所は依頼者と同じ目線で物を見て、依頼者の建築専門的な技術や知識を補うために存在します。工務店などの施工業者と決定的に違うのは、「工事を請(う)けない」というところなのです。工事を請けるとその工事をいかにやりやすく、いかに儲けるかを考えて対応します。それはそれで大切なことです。しかし、依頼者の目線で相談することができなくなります。設計事務所は工事を請けませんので、この工事が必要なことなのか、不要なことなのか、今しないといけないのか、10年先でもいいのか、などを依頼者の立場でアドバイスできますが、工事業者はそんなことはできません。なぜなら工事業者にとって工事を請けないと言うことは仕事にならない、無駄足を踏むと言うことになるからです。


そういうわけで、本来建物のことで困ったときは「設計事務所」に相談に行けることが何よりです。しかし、もっと悲しいことはその受け手側の設計事務所がその体制になっていないことです。大きなビルや再開発・新築ばかりやっている設計事務所もあり、工務店と一体になっている設計事務所(正確には工務店が設計事務所をやっている)のもあり、えらそーなセンセイがでてくる”アトリエ系”と言われている設計事務所があり、実際に困ったときに気楽に相談に行ける設計事務所がほとんどないのが悲しい現実です。


私は、これは設計事務所の社会的な罪だと思っています。いままで設計事務所がこういったことに見向きもしなかったことが非常に大きな大きな”犯罪!”だと思います。ちょっと気楽に相談に行ける雰囲気で、そしてそういった相談を気楽に受けてくれる設計事務所があれば、今までおこっている”悪徳リフォーム事件”の大半はなかっただろうと思います。


ちょっと気楽に相談できる設計事務所を増やそうと私は少しずつ活動をしています。すくなくとも、私の事務所は気楽に声を掛けてもらえて、そして主治医のような存在になればなぁと思っています。同時に、そういう人や事務所がたくさん増える世の中になればなぁと思います。


参考URL
「建築家」の「作品」は業界用語?
お客さんの権利を守る
先生とよばないで