# 単行本: 288ページ
# 出版社: 日経BP社 (2006/3/23)
以前このページでも紹介した、
あなたのマンションが廃墟になる日――建て替えにひそむ危険な落とし穴
山岡 淳一郎 (著)
の著者の最新版。
前回の記事を見て頂いたらおわかりですが、前回は「取材力と構成力は技術的な側面はもっと切り込んで欲しかった。」なんて、書いておりましたら、その気持ちが作者に伝わった わけではないでしょうが、今回は前回より一段とよくまとまっておりました。
そして、今回は技術的な側面からの話ではなく、マンションとそのコミュニティ、つまり、ハードとソフトの面を総括的に、”さすが物書き”というまとめ方で巧みにまとめられております。
マンションの欠陥問題、30年経って疲弊してきたニュータウンの問題、景観問題、とコミュニティーに潜む問題をしっかり書き込まれていて、大変読み応えのある本でした。
私も仕事として、マンション管理組合の運営や助言をしておりますが、それはマンションのハード面を知った建築技術者としての技術的裏付けがあるから、ソフト面も適切なアドバイスができるものだと思っています。あなたのマンションの管理会社どうですか? マンション管理士どうですか?
建築の技術者が、その知識や技術を、ソフト面やコミュニティー形成・育成に活かせると言うことはとても大切なことです。また、そうあるべきだと思います。
「建築は専門家の独壇場と思いがちだ。素人にはわからない、任せなさい、と言われたら一般人は返す言葉がない。しかし、じつは素人に技術をわからなくしているのは当の専門家達だと言うことに建築関係者は気づいていない。家は住人がいなければ家ではない。素人でも「話せばわかる」のである。」
と、著者はばっさりと切り捨てる。そう。まさにその通りだ。
「素人だからわからない。」ではなくて、「素人だけどわかるように説明してくれる専門家」が真の専門家たり得ると考えるのであります。
「素人だからわかろうとしない。」は、財産放棄につながります。もう一度考えてみて下さい。
久しぶり、名著に出会い、爽快な気分です。
同時に、専門家として立ち向かわないといけない問題はまだまだ深いことを再認識しました。