トラブルに遭遇する人

「いい家づくり」のQ&A100 のページでも紹介しております、こちらの本に寄せた私のコラムがあります。
「トラブルに遭遇する人」というタイトルですが、先日ふと読み返して、本を買っていただいていない人にも読んでもらった方がいいのかなぁと思い、このページの原稿だけ公開します。

もちろん、皆さん。できれば本も買ってくださいね。
販促の一環として転載しているだけですので:-D
ちなみに、アマゾンでは中身検索もできます。


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「建築よろず相談」解説委員 (著)
価格: ¥ 1,785

# 単行本

# 出版社: エクスナレッジ

# ISBN:  978-4-7678-0759-1

# 発売日: 2008/12

トラブルに遭遇する人

一般に住宅のトラブルは、誰もが同じ確率であうものではありません。トラブルに見舞われる人にはある種の共通点があります。つまり、住宅にまつわるトラブルは未然に防ぐことが十分に可能なのです。

私が感じている共通点を分類すると以下の3点に集約されます。

1.自分の建物が正確に言えない
たとえば車を買うときのことを考えてみましょう。もしくは趣味の比較的高価な所有物(時計や鞄、パソコンなど)のことを考えてみましょう。メーカーや品番、型式、年代、場合によってはその型番まで正確に言えるのではないでしょうか。
では、建物はどうでしょう? 工務店やメーカーは知っているでしょう。敷地面積や延床面積はいえるかいえないか。工法やその建物の特徴、場合によっては入手形態(売買契約か請負契約かなど)がいえない場合が多いのではないでしょうか? 「建物は専門的で分からない、からしかたがない」と思っていませんか? 車だって、時計や鞄やパソコンだって、建物に負けず劣らず専門的です。でも、それを自分が一生懸命調べて好きであれば端的に表現できるでしょう。一般的にそれらよりも高価な住宅において、分からないと思いこみすぎて、考えたり調べたりすること、専門家に協力してもらうことを放棄していませんか?
分からないからよく調べなかった、ということがトラブルの第一歩です。

2.住宅供給業者を無条件で信じる
二つめの共通点は、マンションを購入するときの販売業者(デベロッパー)や建売を購入するときの販売業者、ハウスメーカーなどのいわゆる「住宅供給者」を無条件で信じているということです。トラブルになった以後は逆に「全く信用できない」、といった最初の印象と真逆になり、その振れ幅も非常に大きいのも特徴です。
では、なぜあなたはその業者を信用したのですか? 大手だから、地元で数多く分譲しているから、テレビや新聞にCMをしているから、色々あると思いますが、多くがほとんど根拠のないものです。では、小さい業者やひとつひとつを大切に作るが故に施工した物件が少ない業者、テレビ新聞の広告料を販売価格に上乗せせずに発注者に還元している業者などは信用できませんか?
つまり、業者や担当者の中身を見ずに、その属性や背景・知名度だけを頼りに、「この業者は信用できるのだと自分に思いこませて」いるに過ぎません。こちらもある意味「相手を十分に見極める」と言うことを「放棄している」といえます。

3.違和感を感じている
相談に行くと相談者が決まって言う言葉があります。「(最初から または 途中で)なんかおかしいとは思ったんですよねぇ。」このことは「相手を無条件で信用できると自分に思いこませている」あなた自身が直感的に感じているひとつのサインであると思います。しかしこのサインを見逃すのも、トラブルに遭う人の共通点です。打合せの時にこの人おかしいこと言っているなぁ、とか、こんなこと聞いたこと無いなぁ、とか、担当者と業者の発言が違うなぁ、などなど。何となく違和感を感じながらも、「自分だけは大丈夫」と思いこみたい感情がそのサインを見逃してしまうのです。

私がトラブルになる人の相談を受けているといつも感じるのが、住宅取得者として最低限しなければいけないことを「放棄している」人が多いということ。考えたり調べたり、専門家に協力を依頼することを放棄する人、相手を信用するためにしなければいけないことを放棄する人、自分の怪しいというサインを気づくことを放棄する人。こういった人たちがトラブルに見舞われる確率が高いといえます。
住宅は非常に高価な買い物です。トラブルに遭わないためにも、今一度立ち止まって考えてみませんか。考えること、自分の感じたことを素直に口にしてみることからはじめませんか? 素人の直感はかなりの確率で正確だということを、私たち専門家は経験的に知っていますから。