どんな職業でもそうであるが、同業者の集まりという団体と言うのがあります。我々の世界であれば「日本建築学会」や「大阪建築士会」などといったものがそれに当たります。それぞれにそれぞれの目的を持って、会員同士の研鑽を積んだり情報交換をしたりすることが大きな目的です。私も「日本建築学会」などで研究発表をしたり、同じジャンルの研究者同士の意見交換をしたりしています。
しかし、ここへ「仕事をする」という要素を入れた集まりをつくることがあります。一つはみんな仕事がないから集まって協同組合のようなものをつくればそれで仕事を受けようと言う魂胆です。まぁ、それが施工者として大工・塗装屋・防水屋・設備屋などのそれぞれの専門が明確にされているものを集めて効率よく仕事をするたぐいのものであればまだ理解できます。しかし、たとえば設計者の集まりであったり、欠陥やトラブル住宅の相談を受ける専門家の集まりであったりすることがあります。さらに、ひどいときはその中に施工業者まで含んで団体を組織したり、NPO法人として立ち上げたりと、様々です。
私は同じような悩みの人が集まって、自分たちで情報交換することは参考になり有用だと思いますが、これらの集まりで業務をしようとするとたちまち様々な問題が生じると思います。
まず、業務としてこなそうとするときの責任の所在が明確にならないことです。団体を組むとその団体名で業務をすることにはなりますが、設計や相談業務などは受けた人によって解決の仕方や相談方法は全く異なります。これが、何かをつくるとか工事をするという作業であれば腕の善し悪しはあっても結果や目的は同じです。しかし、相談業務というのはマニュアル通りすれば同じ結果が得られるというものではありません。特に建物の相談となると、建物一つ一つに持つ性質が異なるので一本調子で必ず成功するとはいきません。そう言った相談業務を団体で受けてしまうと、責任の所在が明確になりにくくなります。つまり団体の名前で業務を行うことは問題が生じたときの対応が団体でしにくくなると言うことです。そうであればはじめから個人(それぞれの事務所)で業務を受け、その事務所が責任を持って対応する方が良いのでは無いでしょうか?
私はいつも「設計や相談」という仕事は非常に孤独な作業だと感じます。誰にも相談できず、相談したとしてもすべての責任は自分にあるということを肝に銘じておかないといい仕事ができません。徒党(グループ)を組むことで責任が分散され、無責任な業務になるケースがよく見受けられます。その「孤独」に耐えられるのかどうかというのが「設計者の資質」かもしれませんね。