マンション<大規模修繕の取り組み方 その4>

3.劣化診断を皆に知ってもらいましょう

お待たせいたしました。約18日ぶりの更新です。とてもとても忙しかったので気になりながら進められませんでした。再開いたしましょう。

前回は、大規模修繕に先立って劣化診断をするという話しをしました。どこが悪くて、どう直さないといけないかをまず知ることが大切です、という主旨。それがわからないと、直し方が決まらない、予算が決まらない、ゼネコンや工務店に見積もりが出せない、といったことになります。

では、今回は劣化診断の後にどうするかということをお話ししましょう。

劣化診断の後はその報告書を元に見積もりを出せば?というのは焦りすぎ!

劣化診断の後に管理組合がすることは、劣化診断の内容をマンションの住民全員に正しく知らしめることです。この<大規模修繕の取り組み方>シリーズのその1でお話ししたように、マンションは所有者全員で今後の方針を決める必要があります。だからこそ、全員に正しく知らすことが必要なのです。

さて、一言で知らせると言っても、劣化診断の結果はきわめて専門的です。しかし、その内容は居住者や所有者がより正しく理解しなければいけません。そのギャップを埋めるためには、専門家による劣化診断調査の報告会や、広報活動を徹底して行なうことなどが重要になってきます。広報活動には、広報紙、ポスター、回覧などの手法があります。

調査報告会は調査を行った専門家に依頼することは容易に想像がつくでしょう。それが最も手っ取り早い方法です。では広報は? 理事会や住民に新聞社や出版社に勤めているプロの編集者ならちょっと無理を言って頼めば作ってくれるかもしれません。そんな人が身近に必ずいるとは限りません。また、編集の専門でも建物の専門でない方が建物の専門的な調査内容をうまくまとめることはとても困難です。そんなときにうまく専門家に協力を依頼すればいいのです。私もそうですが、マンションの相談に乗っている専門家はこういったケアまできっちりしてくれます。結局この部分がとても大切だと知っているからです。いくら建築の専門的に優れていても、そのことがマンションの住民に伝えることができなければ、それは優れていることにはなりません。

ここで専門家の選び方のような話しになりますが、「こういった専門家やコンサルタントに相談に乗ってもらうことが必要です。」というのを、まとめておきましょう。

(1)建築の素人の住民にもわかりやすく説明してくれること
 専門用語やカタカナ用語を使ってかっこよく説明する人よりも、住民の疑問や希望に一つずつ丁寧にわかりやすく答えてくれる専門家を選びましょう。専門的すぎてわかりにくい説明をする専門家では今後の修繕設計や工事中の進め方にも支障が生じます。

(2)資料がわかりやすく、十分な量であること
 資料というのは多ければいいというものでもありません。内容と知りたいことが適切に簡潔にまとめられていることが大切です。また、何ら資料を作らない専門家というのも要注意です。少ない量で明瞭に資料が作れる専門家は、広報やポスター作成をうまくまとめてくれる可能性が大きいです。

さて、もっと早く専門家の選び方を知りたかったという声が聞こえそうですが、これまでのお話がなければ何故先の(1)や(2)が必要かがわかりにくいと思いますので、あえてこの場面で出しました。

広報活動も無事に終わり、住民の大半が正しい知識を身につけてくれた後は修繕設計というものに進んでいくことになります。まだまだ道のりは長そうです。