悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」―ミツバチが消えた「沈黙の夏」

言わずもがなではあるが、一週間前に書いたハチはなぜ大量死したかに関連して、若干気になった本を読んでみた。

「ハチはなぜ大量死したか」は2009/1/27発行であるが、オリジナル(原書)は2008/9/16発行である。翻訳本に4ヶ月を要したことになる。一方、この本は2008/6/4発行である。ほぼ同じ時期に著されたことになる。

悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」―ミツバチが消えた「沈黙の夏」 (単行本)

船瀬 俊介 (著)

# 単行本: 235ページ

# 出版社: 三五館 (2008/05)

# ISBN-10: 4883204324

ハチはなぜ大量死したかでは、ミツバチの大量失踪事件は「原因不明」ということになっていた。しかし、この本では、かなり明確に「ネオニコチノイド」という神経系を破壊する農薬が原因で起きていると、かかれている。そしてなぜこのネオニコチノイドという農薬が使われるようになったかと言うのを比較的丁寧に書きつづってくれている。

ただ、若干扇動的な文体なのでいちいち突っかかってしまう。とはいえ「話半分」だったとしても衝撃な内容は多い。

作者は、船瀬 俊介氏。「食品・健康・環境問題に取り組む行動はジャーナリスト」と紹介されており、電磁波問題、牛肉問題、農薬問題、抗ガン剤問題など幅広く問題提起している。着目点や問題提起については高く評価したい。ただ、若干文体が気に入らない(苦笑)

さて、なぜ「農家は農薬を使うのか」というそもそもの疑問に立ち返る。生産効率を高めるため、というのが一般的な考え方だ。ただ、「農薬」というものに対するイメージを一般消費者はどう思っているだろうか。八百屋さんにふつうのキャベツと「無農薬」と書かれたキャベツがおいていたらどちらを選ぶだろうか。

そう、「農薬」は消費者にとってネガティブなものでしかない。ない方がいいと潜在的に思っているものである。しかし、農薬を使わないと農業ができないという農家の叫びも聞こえる。

この本ではなぜネオニコチノイドを使うのか、という問いに対して「カメムシ対策」という答えを用意している。このあたりの1:1の線の引き方が若干気に入らないのだが・・・。それはさておき、この本によると、カメムシは稲1000粒に1~2粒の稲粒の汁を吸う、とのことだ。その程度ならいいじゃないのか、と思うのだが、全農は1000粒中2粒で1等米を2等米に格下げして一俵(60kg)あたり約1000円程度値引いてしまうらしい。農家にとってカメムシが汁を吸ったカメムシ斑点米が出たら収入に大きく影響する。従ってカメムシ駆除としてネオニコチノイドを使うというのだ。

あまりにも一意的なストーリーだが本書によるとそうらしい。(このあたりが個人的に説得力と迫力を欠いているように思うのだが・・・)

また、農薬の主流は以前は有機リン系だったが、虫たちが耐性をつけてしまったためほとんど効かなくなったとのこと。つまり、次から次へと新しいそして強い薬(毒?)が必要になる。現在はネオニコチノイドということだそうだ。ただ、虫たちも馬鹿じゃないので、ネオニコチノイド耐性も確立されつつあるらしい。

もう一つこの本で興味深かったのは「占領国アメリカが押しつけた農薬付け化学農法」という章である。なるほどそうかもしれない。私たちの身の回りは「化学合成物」であふれている。食物に限らず、潜在、建材、家具、衣料に至るまで化学合成物にあふれている。そられがすべて「体にいいわけ」ないし、無限にある組み合わせの中で何と何が安全で、どれと組み合わせると危ない、なんて決してわからない。人間が「天然」である以上「化学化合物」が人間にいいわけはない。多かれ少なかれ問題を有していると考えた方が自然である。

言うまでもなく「薬」は「毒」である。逆に言うと、毒でなければ薬にならない。我が国の食糧自給率を上げないといけない、というのは当たり前のことだが、効率的な農業をするということは、必ずしも農薬に頼ることだけではないと思う。機械化と農薬依存は別であると考えたい。

安全なもの、を手に入れることが本当に難しくなっているのかもしれない。
この扇動的な本を読んだとしても、私も「ネオニコチノイド」は即刻やめるべきだと思う。