ミルグラムの実験

また、建築と関係ない話を一つ。

僕が愛読しているコミック(「Q.E.D」講談社)に出てきたので紹介します。

みなさんはミルグラム実験(アイヒマン実験)というのをご存知でしょうか。

この実験は、閉鎖的な環境下における、権威者の指示に従う人間の心理状況(「人はどこまで他人の命令に従うか」)を実験したものでナチス・ドイツのユダヤ人虐殺の責任者であるアドルフ・アイヒマンの裁判の翌年(1961年)に、「アイヒマンとその他虐殺に加わった人達は、単に上の指示に従っただけなのかどうか?」という質問に答えるために、ミルグラム(アメリカイェール大学の心理学者)によって始められたものです。

簡単に概要を説明すると、

『記憶に関する実験に参加(協力)するということで、職種、年齢あらゆる協力者を募ります。

実験は2名が教師役と生徒役に分かれて、別々の部屋に入れられます。(音声は聞こえるようにしてあります。)

本当は、教師役が実際の被験者で、生徒役はサクラ(協力者)です。

生徒役に問題が出題され、間違えると教師役が生徒に電流が流れる仕組みになっているボタンを押します。
そして、間違える度に電圧が上げられ、そのうち隣の部屋から苦しむ生徒役の悲鳴や壁を叩く音が聞こえ出します(しかし、実際には電流は流れておらずこれは演技です)。

教師役が実験続行を拒否したら、「大切な実験なんで続けてください」「あなたには責任はありませんから続けてください」「これはこういう実験なんです続けてください」などと言い続行させる。

そして、ついには悲鳴さえ聞こえなくなり、死の危険性がある電圧まで上がっても実に65%の人が(拒否しつつも)電流を流すのをやめなかったという実験です。(実際に実験前の予想ではこの数字は1.2%程度だろうと予想されていた。)
この実験は、世界中の研究所で幾度か行われたが、やはり結果はほぼ同様であったと言われています。』

これは、自分では止めたいと思っていても、威厳のある専門家や権威者の命令には逆らえないということです。

社会・職場・学校・家庭内にいたる大小さまざまな集合体で存在する、利権・汚職・いじめなど人間の卑劣さと弱さが証明された実験です。

この文章を読んでいるだけでは65%というのは考えられない数字だろうが、自分が被験者ならどういう行動をとるか、自分の現在の行動はどうか考えさせられる。