ハチはなぜ大量死したのか

原題は「Fruitless Fall: The Collapse of the Honey Bee and the Coming Agricultural Crisis」である。
つまり、「Fruitless(実りなき) Fall(秋):ミツバチの崩壊と来るべき農業危機」というタイトルである。私はこちらの方が「ハチはなぜ大量死したのか」という邦題よりも好きだ。内容を実に忠実に表していると思うから・・・。ただ、実りなき秋(レイチェル・カーソンの「Silent Spring(沈黙の春)」をもじったのは明らかだが)では、売れないと出版社は思ったかもしれません・・・

ハチはなぜ大量死したのか (単行本)

ローワン・ジェイコブセン (著), 中里 京子 (翻訳)

# 単行本: 320ページ

# 出版社: 文藝春秋 (2009/1/27)

# ISBN-10: 4163710302

さて、欧米を中心にミツバチが大量失踪している、というニュースを聞いた方も多くおられると思います。私もその一人です。私は、だいたい動物や虫たちのこういった異常行動は何らかの「警告」であると思ってしまうたちなので、すぐにそう思ってしまいました。
だいたい、人間は自然に向き合わなさすぎです。人間が自然に背を向けるがために、自然の発する声が聞こえなくなるのです。

ではミツバチの警告は何だったんでしょう。実はこの本には確定的な原因は書いてくれていません。強いて言うと「単純な一つではない」と。ちなみに本書の最後にあの「福岡伸一」先生が解説されている。そう、当サイトにも4年前(05年)に登場していただいた[url=http://www.pap-pro.com/koma/modules/pico/index.php?content_id=73]この方[/url]です。

その、福岡先生は例の「狂牛病だって原因はわかっていない」とかかれている。そうでした。結局狂牛病だってミツバチ失踪事件だって原因はわかっていないのです。

いや、わからなくて当然なのかもしれません。自然に背を向けた人間に教えてくれるほど、自然は優しくないと思いますよ。私は。

2007年から09年にかけて北半球に生息していたセイヨウミツバチの実に1/4が消滅したという。死骸も見つからない。どこに行ったかもわからない。ということから始まる。

私は蜂蜜は大好きであるが(嫌いだという人はあまりいないと思うが)、蜂蜜がこんな仕組みでできているのか、とか。ミツバチがこんなに賢くて働き者であることは知らなかった。むしろ、知らない人の方が多いのではないだろうか。そして、こんなに私たちの生活になくてはならない存在だったということも・・・

本書以外に付録も抜群におもしろい。う~ん、この刺激的な本は何だろうか。下手に地球温暖化の本を読むよりもよほど背筋が寒くなる。前述のように原因は書いてくれていない。原因はわからないのは温暖化だって同じだ。ただ、何をしなければいけないかは、この本からは読み解ける。温暖化はCO2を減らしてどうなるのか、減らすためにどうすればいいのかは、さっぱりわからない。省エネルギーを心がけることぐらいだが、それは当たり前の話だ。

そう、ハチの失踪を防ぐのもすごく当たり前のことを積み重ねるだけかもしれない。

ハチは多量の化学物質と無駄に大きくさせられ、人間に年中働かされた結果大量のストレスにさらされ、働く意欲を失って「うつ」になった、というのがかいつまんで言うと本書の書いていることだ。かいつまんで言いすぎだが。詳しくは本書を読んでほしい。

ん??? 身につまされないか?
前段落の「ハチは」の主語を「人は」に変えたって、全く一緒じゃないか??
そう、最近うつが増えているのも、ニートが増えているのも、自殺者が増えているのも、すべて化学物質まみれの食事やスナック菓子を食い、無駄に高エネルギー食を食べ、年中働かされ、大量のストレスにさらされているのは、人間だって同じだ。

現代社会の病気を読むにもこの本はいい指南書になっていると思われる。

負けるなミツバチ!!と人間社会を激励しておこう。