昨日(11/17)に発覚した「千葉県市川市の姉歯建築設計事務所による構造計算虚偽事件」(参考URL:国道交通省の対応ページ)ですが、なんとまぁひどい話です。
というのが、私の第一印象ですが、「違法行為をはたらく建築士」というのは実はあまり珍しくありません。私は普段からそういう連中は片っ端から資格剥奪したらいいと思っているのですが、なかなかそうはいかないみたいです。
以前、このホームページで悪徳リフォームは設計事務所がしっかりすれば無くなるはずだ、という風に書きましたが、最近関わった悪徳リフォーム事件では、その有資格者である一級建築士が関与していました。「ついに、恐れていた時が来た」と驚くと同時に、ものすごく悲しくなりました。
国から資格を与えられたということは、医師にしても弁護士にしても”社会的な責任”が生じるわけです。その有資格者が行った発言や行動は、一般の人にとっては揺るぎないものになります。考えてみて下さい。医者が「この薬を飲んでおいて下さい。」と言えば、私たち素人は「いやぁ、それよりこっちの方がいいんじゃないですか?」と言えますか? 「あなたの病気は○○です。」といわれたら、「私はそうは思えない。」と言えますか?
建築士だって同じだけの責任を持っているわけです。一般の人に説明したら、それはそれなりの重みと価値を持っているわけです。医者だって、弁護士だって、一定の割合で”とんでもない人”はいます。人間が集まるわけですから、当然といえば当然、仕方がないといえば仕方がないです。しかし、その能力や技術、資格を持って一般の素人をだますのは許せないです。
残念なことに、この手の「許せない奴」はたくさんいます。表に出てこないだけですし、今回さらに残念なのは、この構造計算をした事務所を選んだのはおそらく建築主でないということです。建築主はどこか別の設計事務所に頼んで、その下請けとして設計事務所がこの問題の事務所に依頼したのでしょう。そうなると、建築主は限りなく悲惨です。元請けの設計事務所の責任ではあるのですが、結局責任のなすりつけあいになりそうです。
もうひとつ。報道からは「確認申請を受け取ってチェックした民間確認検査機関の検査態勢についても疑問の声」が出されています。民間確認検査機関の問題についてはこちら(1)と(2)に書いていましたが、一種の規制緩和といいますか、「民間にできることは民間に」というどこかの国の首相の言葉を実行しただけなのかは知りませんが、確認申請のチェックを民間でするようになったことも遠因かもしれません。もちろん行政がやっていたら防げたかどうかは別ですし、一番悪いのは虚偽の申請をした建築士です。しかし、またそれを見抜けなかったんだったらただの盲判(めくらばん)ではないですか! そりゃ民間は営利目的ですから、たくさんの仕事を効率よくこなすことが要求されます。「ちゃんとみれないよ」といった不平・不満の声も聞こえそうですが、それだったらこのシステムを作った意味がないではないかと思うのです。こういうのを「元の木阿弥」というのでしょう。(何故民間に確認申請業務が付託されるようになったかについては先のリンクページを良くお読み下さい。)
「行政が責任を持ってしなければいけないことは、損得勘定抜きにしないといけない」と思います。そのために”高い”税金を払っているわけですから。役所の担当者は、確認申請の業務がほとんど民間に流れているので、「楽になった」と喜んでいる場合ではないのです。
今さらですが、もう一度言います。やはり確認申請業務は官でやるべきです。もしそのために人手が足りない、予算が足りないと言うことであれば、税金を上げてでも対応すべきです。そのために税金を払うことを渋る人はいないと思います。(最も無駄を削減することは言うまでもないですが。)
今回の事件、単純に「ひどい建築士もいたもんだ」で片づけないためにも、是非皆さんに考えてほしいと思います。