無性に活字を頭の中に入れたくなるときがある。とにかく急がない仕事(そんなのあるのか?)というか、まだ少し余裕があるとき(そんなときあるのか?)に、思いっきり活字を詰め込みたくなるときがあるのである。
有り体に言うと活字に飢えているときかも知れない。とはいえ、結構本や雑誌は読んでいるとは思うが・・・。
空飛ぶタイヤ (単行本)
池井戸 潤 (著)
出版社: 実業之日本社 (2006/9/15)
ISBN-10: 4408534986
2段組で526ページ、厚さ25mmもあり、一見結構大変な感じである。ただ、意外に一気に読み切ってしまった。
「空飛ぶタイヤ」といわれると「SFか?」と思ってしまうかもしれないが、2002年に発生した三菱自動車のトラックが脱輪して発生した死傷事故をベースに構成された小説。最後にご丁寧に「フィクションである」と書いているが、相当な部分はなぞらえているのではないかと思う。そう思われるような書き方になっている。ただし、いろいろとできすぎている部分も多いのでそういう点ではフィクションだろう。
話の軸は、父親の後を継ぎ運送会社を経営する主人公と主人公家族(主人公は子供の学校のPTA会長をしている)、トラックメーカー、警察、銀行(系列銀行と運送会社の新たな融資銀行)、被害者家族、週刊誌記者こういった人々を中心に展開する。
作者は元銀行員(三菱銀行だったみたい(笑))だったこともあり、「経済小説」といえるしっかりと組み立てられている。そういう意味ではなかなかおもしろかった。
個人的には、主人公の「自営業」と「サラリーマン理論」のせめぎ合いがおもしろいと感じる。
この手の話は山崎豊子著の「沈まぬ太陽」などの「モデル小説」といったジャンルに近いとは思うが、深みと迫力は「沈まぬ太陽」の方が上だろう。ただ、フィクションといいながら実際そうだったんだろうなぁと思わせる書き風は見事である。
しかし、当の三菱自動車や三菱ふそうは倒産していないし、調べていてわかったがリコール隠しをしたとして刑事裁判になった三菱ふそう元会長や三菱自動車元常務は一審では無罪になっている(ただし、高裁で逆転有罪となって確定している)。結局、会社がでかいと生き残れるというのが庶民感覚としては不思議だ。確かに、倒産させることに社会的影響は大きいと思う。基幹産業だけに裾野は広い。結局銀行にしても自動車会社にしてもつぶれないんだよね、ってことになってしまう。同じことを零細企業がおこしたら、あっという間に行き詰まるだろう。結局国や銀行が救ってくれるとしたら、やはり大企業は勝ち組なのだろうか、と考えてしまう。
うちも零細企業だし 😥
ただ、自営業者や零細企業には大会社にない楽しみやいい面もたくさんあるから、差し引きゼロと言うことで、自分を納得させよう(^^ゞ