実は私の学生時代からの専門は「建築環境工学」という分野です。建築分野は、主に「意匠・デザイン系」「環境・設備系」「材料・構造系」と3つの分野に分けることができます。もっと細かく分類できますが、ここでは粗く分類した場合と考えてください。
その中で、私が学生の頃から修士・博士と一貫して研究対象にしてきたのが、「建築環境工学」と言われている分野です。建築環境工学とは建物内外の「光・熱・音・空気」環境がメインテーマで、その延長上に、空調換気設備や給排水ガスなどの衛生設備などが大きなくくりのテーマとなります。
建築環境工学の分野は、どの大学もそうかもしれませんが、比較的人気がない分野のように思います。光や熱、音や空気などの物理的な現象を扱い、そのために理系色が強く、数式がいっぱい出てくる分野ですから、少し数学・物理系が苦手な学生は敬遠するという傾向があるのかもしれません。一方で、建築環境工学を教える教員側も「建築環境工学」のおもしろさを伝え切れていないことも原因ではないかと”こっそり”思っています。
物理現象を扱うとはいいながら、建築環境工学に「建築」がつく理由は、「最後は人間にとってどうか?」ということを最大限の関心事とし、対人間としての学問になっています。わたしは、だからこそ面白い、そして、難しい、と思っています。
今でこそ、ちまたで「環境」「環境」と叫ばれる時代ですが、私が建築環境工学を大学で学び始めたウン年前は、どちらかというとマイナーな分野でした。「快適で当たり前」と思われがちな地味な分野でもありますから、なかなか注目されないのもまた事実。でも、温熱環境や空気環境は今や無視できない存在ですし、騒音や視環境も人間の快適性に直結するモノです。ただ、建築環境工学を専門にしている私から見ると、疑問のある使われ方をしている技術や考え方もしばしば見かけます。
当事務所では、本当の「建築環境」を大切にした建物づくりを目指したいと思っています。デザインも構造も大切ですが、最後の最後に、建物の快適性は「建築環境」が決める、そう信じています。