やっぱり湿度が大切!?

日本にはビル管法(正式名称を「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」)があって、建物の環境を衛生的に保つために、空気(温度/湿度/気流/汚染物質)や水質の検査や清掃、ネズミの駆除などが事細かく決められています。

なんてことは、大学の建築環境工学や建築設備の授業をするときに必ず言っていることです。このおかげで日本の建物が衛生的に保たれているのです。

特に空気質関係だとこのような決まりになっています。

ア 浮遊粉じんの量0.15 mg/m3以下
イ 一酸化炭素の含有率100万分の10以下(=10 ppm以下)
ウ 二酸化炭素の含有率100万分の1000以下(=1000 ppm以下)
エ 温度(1) 17℃以上28℃以下
(2) 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。
オ 相対湿度40%以上70%以下
カ 気流0.5 m/秒以下
キ ホルムアルデヒドの量0.1 mg/m3以下(=0.08 ppm以下)

湿度以外の温度や気流・粉塵、COやCO2、ホルムアルデヒドなどが決められているのはわかります。人間の感覚に影響が大きい温度や気流、健康安全性を確保するための粉塵、猛毒な一酸化炭素、シックハウスの原因となるホルムアルデヒド、それらの指標となりうる二酸化炭素濃度に基準が設けられています。それは理解できます。

でも、それほど感覚に敏感ではなく、高すぎると結露やカビの原因になるものの、低くても一見何も問題のなさそうな湿度(正確には相対湿度)が定められているのはなぜだろうと昔から思っていました。

教科書を読んでも、湿度が低いと静電気やインフルエンザウイルスなどが繁殖するから程度の話しかなく上限値だけでなく下限値も決められていることが不思議でした。
むかし、某大学の環境工学の先生とそんな話になったときに、湿度なんて重要じゃないし、欧米ではあまり議論の対象にならないけどね、みたいな話で結局わからずじまい。

湿度は温熱感に与える影響は大きく、同じ気温でも湿度が低いと涼しく感じます。日本の夏は湿度が高いですが、夏に湿度の低い北海道やヨーロッパに行くと同じ気温でもずいぶん過ごしやすく感じます。

さて、今年新型コロナウイルスに振り回されました。まだまだわからないことの多いウイルスで、挙動不審です。元々アジア諸国で感染者が少なかったり、夏に落ち着いていた感染者数が、冬寒くなって一気に増加の傾向に転じたり。

私はふとここに「湿度」が関係しているのではないかと思い出しました。
湿度が高いとウイルス感染が減るのではないかという仮設です。
インフルエンザウイルスも乾燥している時期に増えます。気温とはあまり関係がないようです。

と思うと、湿度の高くなる春先から夏にアジア諸国で爆発増をしなかったことも、夏に欧米(北海道も?)で増えたにもかかわらず、日本では増えなかったこと、寒くなって乾燥してきたら一気に増えたことも、実は全部湿度のせい!?なんて仮説が成立するのかも、と思っています。

それが事実かどうかまだまだわかりませんが、もしそうだとすると我が国のビル管法の湿度規定がすごく輝いて見えます。そこまで予見して設定したかは不明ですが、湿度基準があることがとても大切なことのように見えてきます。

と偉そうに言いつつ、湿度が高いと飛沫飛散量や範囲が減るというシミュレーション結果も出ているようで。

本当のところはどうなのでしょうね。
なんにせよ、ビル管法に湿度基準を上限値・下限値で入れた人は偉かった、とうことだけは言えそうです。