金曜日の朝に、以前相談があった「分譲会社」から解決しましたという、報告を兼ねてご挨拶に来られました。
相談は3ヶ月前。知り合いの設計事務所から、「築20年近い新興住宅街の木造戸建住宅で、給水か排水か不明であるが「基礎から水が漏れている」状態になっており、購入者と分譲会社がもめている。分譲会社側から相談を求められているが、相談に乗ってもらえないか?」という連絡がありました。
当事務所は、原則として「施工者や分譲会社などのいわゆるプロから」の相談は受けません。話を聞くことはしますが、お手伝いできるか、まして「見方になる」というお約束はできませんし、全く反対の(業者側にとって厳しい)判断をするかもしれません、それでもよければご紹介ください、と伝えた上で、来られることになりました。
相談内容は、確かに問題はありそうだ、ただし十分に対応する気持ちがあるのであれば解決できなくはない、という程度。そこで、当方のスタンスをご説明した上で、当方に相談を依頼する場合は、相手となっている購入者から当方に直接相談するようにご紹介ください、とお伝えしました。
ここで重要な事は、素人である購入者側にプロをつけることです。そのプロが私達のような設計事務所であり、私達は公平かつ中立に建築技術的な判断をする、ということです。そうすることで、双方が納得できる着地点を見出すことができるようになります。これが、購入者側ではなく、分譲会社側に私達が協力すると、素人をプロが寄ってたかって説得している、という構図になり、ますます不信感が募ることになります。
ただ、今回の話は、私のアドバイスにより分譲会社としてもある着地点を明確に見いだせたとのことで、譲るべきところは譲り、そうでないところは毅然と対応したことで、第三者に依頼することなく双方が再度信頼関係を結ぶに至った、という結果になったとのことです。本来は、当事者同士で解決するのが一番です。
今回はうまく解決できたようですが、いつもそうとは限りません。また、当事者同士では見えない、見落とすポイントもあります。第三者の専門家だからこそ見えること、気付くことがあります。
それはトラブルだけではなく、新築でも全く同じことです。新築であっても「第三者の専門家」であることを徹底します。新築は、依頼者と工務店との関係にとどまらず、近隣などでトラブルの種はいろいろなところに落ちています。新築前の挨拶でにこやかにご挨拶した人で安心していても、なにかのきっかけでクレームの電話をしたり、現場で絡まれたりは、しばしば起こります。だからこそ、いついかなる時でも、設計事務所は「第三者」であることを貫くべきです。悪いものは悪い、悪くないものは悪くない、と堂々と言えることが大切です。誰かに肩入れした態度を示すと微妙なバランスが崩れ、問題がこじれあり、長引いたりすることになります。長く住む家だからこそ、最初にきちんとした関係を作っておくこと、そのお手伝いをすることも設計事務所の大切な仕事だと思います。
だからこそ設計事務所は、常に公平中立であることを徹底し、素人である依頼者のみならず、施工者や近隣からも信用してもらうことが何よりも大切です。
そして、そういう設計事務所があるということを、広く知ってもらいたいというのが私達の望みです。