省エネルギーの話

住宅と住宅以外の建物(非住宅)の省エネ基準が昨年改正されました。と言われて、一般の人にはあまり知られていないかもしれません。今回改正された基準は、これまでの基準から大きく変わり、かなり複雑になりました。先日も講習会に参加してきましたが、設計者が集まる講習会でも、どの程度の設計者が十分に理解できたのか疑問な感じがしました。

当事務所でも、長期優良住宅やエコポイント制度などを住宅で申請することも多くあります。ビルであればCASBBや最近では低炭素住宅なども省エネ関係で話題になっています。

私は、建築環境工学という分野の研究をしていましたので、熱・光・音・空気などの環境に関する分野は専門です。なので、省エネの原理や基礎的な考え方は大学のときに授業で聴いたり、研究したり、逆に大学生に教えたりしているので、何ら抵抗を感じません。むしろ、これまでの基準が「性能規定」といった、熱理論ではなくどの種類の断熱材を何mmの厚さで入れなさい、という決め方で決められていたことに疑問や矛盾・無駄を感じていました。

一方で、大学での「建築環境工学」は授業もあまり人気のある授業ではなく、研究室も比較的地味なので(これは全国的にそうだと思います)、いわゆる世の中の設計をする(意匠系・デザイン系といわれる)人たちには、そういった基礎的な考え方のない人や、大学での勉強を忘れてしまっている人たちが多くいるのも事実です。

昨今の省エネブーム?をみていると、私がウン年前に大学であえて不人気であった(?)環境工学を選択し、大学院で研究を続けていたことが、いかに先見の明があったかを裏付けることになったとほくそ笑んでいます(笑)。当然ながら、大学での研究はこのたびの改正省エネ法の考え方よりもさらに先を行っています。

言うまでもなく、省エネルギーは大切な考え方です。また、構造強度(耐震性)と同じくデザイン的にあまり見える部分ではありません。私は「見えない部分のデザイン」とも言っていますが、実はその「見えない部分のデザイン」がこれからの建物の性能を決めるのにとても重要な要素になります。構造や断熱性能・気密性能などの室内環境に及ぼす「見えない部分」は新築の時に取り組んでおかないと、なかなか改修や取り替えができないからです。耐震改修同様に断熱改修という考え方もありますが、やはりいずれも限界があります。

だからこそ、当事務所では、構造や断熱性能などは「お任せしてほしい」といっています。そこは本当のプロに任せるべえきところです。その上で、間取りをどうしよう、仕上げをどうしようと本来の「ワクワクする家づくり」をめいいっぱい楽しんでもらいたい、と思っています。

平成25年改正省エネルギー基準パンフレットは、国交省のHP(http://www.mlit.go.jp/common/000996591.pdf)にあります。記号や数式ばかりで、数学や物理の得意な方でないとすぐに眠たくなりそうですが、これらを当たり前のように考えて設計をする時代が来たということでもあります。設計者にもそういった能力やスキルが求められ、これから家を建てようとする人はそういった設計者を選んでいくことが大切なんだということです。