# 文庫: 310ページ
# 出版社: 筑摩書房 (2005/01)
住宅喪失と同じ著者です。出版はこの「倒壊(1998/12/10初版)」の方が先ではあるが、2005年1月に文庫本化されており、その後談も載せられている。
阪神大震災とその後の不況、社会構造(雇用)の変化がもたらしたものを、非常に詳細に(時に著者の考えが強すぎるところもないではないが)描かれている。非常に迫力があり読み応えがある。
なぜそこまでして住宅を手に入れようとするのか? 著者の言葉を借りると「賃貸住宅事情が悪いからだ」と言うことなのだろうが、私は決してそうは思わない。借家暮らしも考え方や工夫でなんとでもなる。その面の政策も決してないわけではない。あまり広報していないために多くの人が知らないだけ、ということも多い。
阪神大震災は実に不幸なことであった。しかし大自然の力に対して人間はあまりにも無力であり、自然災害は避けられない。問題はそれらといかにしてつきあっていくかと言うことであり、自然災害のあとの人災を避けるべきである。私は地震の後ボランティアとして建物調査に多くの被災地を歩いた。阪神大震災の被災者のほとんどは人災であったと考えている。多くの欠陥住宅が涼しい顔をして普通に居座っていた。それが、ちょっとした地球の気まぐれで大災害をもたらしたのである。
建物をけちり、土地をけちり、生産者も購入者も自分たちの都合のいいように法律や技術を運用した結果があの惨事を生んだといえる。現在も当時も、法律や技術を適切に守っていた建物はほとんど被害を受けていないと言うことをもう少し注目すべきである。
ただただ、価格や根拠のない情報を無条件で信用するのをやめないとこの国の行方が心配である。
書評から大きく外れてしまいましたが、こんな本でした(笑)。