お客さんの権利を守る

 当方の事務所では、施工者とお客さんがリフォームの工事契約を行うときに、工事契約約款を独自に作成して契約書に添付しています。工事契約約款とは、工事中の約束事を契約者同士(この場合は、施工者とお客さん)で取り決めておく一般的な用です。施工者のするべき事、建築主(施主)のするべき事、設計・監理者のするべき事を明記しておき、さらに問題が発生した場合の対応の仕方などを詳細に書きまとめたものであり、契約書の内容となるものです。世の中にはいろいろな約款があり、民間(旧四会)連合工事契約約款、日弁連工事契約約款、などがよく使われています。民間連合の約款は内容がどちらかというと工事施工者よりであり、日弁連の約款は新築用です。したがって、当事務所ではリフォーム用の工事契約約款を独自に作成しています。

 そしてこのたび、リフォームを行った施工者から連絡があり、「あの約款を利用していいでしょうか。別の設計事務所のリフォームで使うという話があるのですが。」との事。別に私は約款を使ってくれる事に対しては別に何とも思わないのですが、そもそも、設計事務所が人の使った約款を使うという事はどういう事なのだろうか、と考え込んでしまいました。

 「よく寄せられる質問集」の「結局「設計事務所」って何をするところなのですか?」という欄に書きましたが、設計事務所の仕事を一言でまとめると「お客さんの権利を守る」事です。図面を作成する事も、工事中の現場監理をする事も、契約書を作成したり、契約約款を作成したりするのも、「お客さんの権利をしっかり明記する、権利を守る、お客さんに契約当事者として果たすべき義務を説明する。」ためです。したがって、人が作った約款を、横流しで使ってしまう事が本当に「お客さんの権利を守る」事になっているのかどうか、少し疑問に思ってしまいました。

 もっとも、そんな設計事務所が一般的なのもまた事実ですがね。

 あなたの権利は、誰に守ってもらいますか?