錯覚

世間ではいよいよ明日に迫った皆既日食の話題で持ちきりだ。そのことについて今さら書いても仕方ないので、今日は別の話をひとつ。

皆さんは、月(特に満月)が大きく見えるという経験をしたことはあるでしょうか。
地平線近くにある月が大きく見えるということがあると思います。
以前、この疑問について調べたことがあったので少し紹介します。
もちろん、月は地球に若干近づいたり遠ざかったりするが、そんなものは月と地球の距離に比べたら誤差範囲なので、そのせいで大きく見えたりはしません。
この現象について原因ははっきりと分かっていないらしいのですが、有力な説の一つに人間の錯覚であるという説があります。

この説によると、人は空を見上げたとき、半球という認識ではなく、天頂が低いように見えるようです。
そう思って実際の空を見ると本当にそう見えます。特に地平線方向のほうが、天頂方向より遠いように見えます。
これは、天頂方向には何も見えないが、地平線方向には、建物や山などが見えるからだと言われている。つまり空はその建物や山より向こうにあると考えるので(当然だが)地平線方向は天頂方向に比べて遠く認識するのである。

だから?と思うかもしれないが、人間は、網膜に映りこんだ映像(これは左右上下逆転していて2次元映像である)を幾つかのアルゴリズムにより脳が処理(左右上下を戻し3次元化)することにより物を「見る」ということを行っている。
この脳が処理する時にちょっとした錯覚を起こすというのがこの説である。
これは人の経験が関係しているので、子供より大人の方が大きく見えるらしい。

どんな場合においても網膜に映りこむ月の大きさは変わらない(先に書いたように、月と地球の距離はほとんど変らないからだ)。
しかし、同じ大きさに映る月だが、見える場所によっては、遠かったり(地平線上であったり)、近かったり(天頂であったり)するので、脳が月の大きさを勘違いするのである。
(文章だけでは詳しく書けないので、気になる方は調べてください)

私も半信半疑だったが、今年の春に宮古島に行った時に、妙な光景を目にした。
都会で暮らしていると、常に私たちの目には建物などが入ってくるが、宮古島のような場所では、ホテルが立ち並ぶ場所から数百メートルも離れれば何もない自然が広がっている。つまり、ホテルなどが見える場所では(地平線は遠いと勘違いするので)月は大きく見えたのに、ほんの数分車で走れば月は小さくなっている。これはとても奇妙な体験で前述した錯覚説を裏付けるものではないかと思えた。

明日の皆既日食だけでなく天体には不思議で神秘的なことがたくさんある。
もし、そんな機会があれば意識的に月を観察するのもいいかと思います。

余談ですが、大きく見える時の月をカメラで撮影しても、現像したものは大きくないらしいですよ。興味のあるかたは是非試してください。