ふと入った本屋さんに平積みされていたので、手に取って買ってしまった。昔から宮本輝の作品は大好きで、どこかで見かけたらつい、買ってしまっている。宮本エッセイを久し振りに読んだなぁと思ったら、ご本人も「頼まれても書かなかった」と後書きに書いておられた。
いのちの姿 完全版 (集英社文庫) 文庫 ?宮本 輝 (著)
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文庫: 201ページ
出版社: 集英社 (2017/10/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4087456447
ISBN-13: 978-4087456448
発売日: 2017/10/20
宮本作品は表情豊かだというのが私の感想。小説はつねに映像を見ているような気になり、頭の中にこれしかないという映像を強烈に映し出す力があると思っている。
だから映像化されたときに自分の頭の中の映像や人物と異なると見る気が失せてしまうものだが、それぐらい文章や言葉に力があるんだと思う。文章も映像も素人の私が偉そうに言うべきことではないんだが。
ご本人は小説に集中したいからエッセイの仕事を断ってきたとのことだが、なるほど理解ができる。ただ、エッセイも面白い。実に豊かである。限られた枚数の原稿用紙の中で何を言おうとしているのかがストレートに伝わってくる。
そしてこのエッセイ集ではタイトルの通り、「人」にフォーカスされている。人が人と交差することで、社会が動く。いろいろな交差する人を見たからこそ、「いのちの姿」が心の中に刻まれていき、それがやがて宮本輝のなかで小説へと昇華した。
私たちも同様で、どんな人でもどんないのちでも、なにかに影響を与えるのが、人と人との交差であり、いのちの姿なのだと。
とここまで書いて、エッセイ集「命の器」に「どんな人と出会うかはその人の命の器次第なのだ」という帯があったことを思いだした。表現力としては完敗ですな(汗)