マンションの売買契約<青田売り>

 さて昨日は「工事請負契約と売買契約」の話をしました。だいたいご理解頂いていますか?もしお忘れの方、初めての方は前から読んでみて下さい。

 現在世の中で一般的に流通しているマンションのほとんどは売買契約です。コーポラティブや2段階供給(インフィル・スケルトン形式/建物構造体と内部の専有部分を完全に分離し内部を自由に設計できるもの)でもない限り、請負契約でされることはありません。インフィル・スケルトン形式でも内部だけ請負契約でインフィルの部分(つまり構造体)は売買契約となるのではないでしょうか?(経験がないので間違っていたらごめんなさい。)

 売買契約は、「目の前にある商品」と「代金」を交換するものです。従って売買契約の書類は非常に簡単でほとんどが1枚で済みます。先の「工事請負契約」とはえらい違いです。工事請負契約は非常にたくさんの書類があります。ちなみに、私たちが設計する木造2階建ての住宅でも図面はおよそ50枚程度になります。

 ここで、”マンションは売買契約で、「目の前にある商品」と「代金」を交換する”と聞いて「?」と思った方はおられませんか? そうです。マンションを売買契約するときはたいてい工事中もしくは着工前に分譲されるからです。つまり、購入者が見るのはモデルルームであり実際に購入する対象物(売買契約の目的物)では無いわけです。
 ここに、大きな落とし穴があるわけです。購入する側は「モデルルーム(のような部屋)を買う」つもりになり、売る方は「できあがったもの」を売るつもり、になってしまうのです。
 これを俗に言う青田買いということになるのです。

 もっとも最近はマンションに限らず「建築条件付き土地」を購入した場合もこのようなケースになることがあります。つまり、土地は当然「売買契約」にして、建物を土地を売った売り主や仲介業者の指定する(息のかかった(?))工務店に「工事請負契約」することを前提に取引をする、といった場合です。しかも、この場合ろくに図面や仕様の打ち合わせをすることなく数枚の図面で「請負契約」するわけですから、工事業者としても図面に明記していないところは自由にできるわけです。当然お客さんは素人なわけですから、好き放題できるというわけです。

 つまり、マンションも先に紹介した「建築条件付き土地」もそうですが、建物ができあがったときに「こんなはずではなかった・・・。」となるトラブルがしばしばあります。そう、この売った側と買った側の意識のずれが、大きくのしかかるわけです。

 売った方は、トマトを売った八百屋さんと同じく、「見て買ったんでしょ。」「そのつもりで買ったのでしょ。」となるわけですが、買った方は「モデルルーム(みたいに)できると思っていた。」「不動産屋さんの説明と異なっている。」となるわけです。

 言葉は悪いですけど、これはもう一種の詐欺です。そう思いません?
 これからマンションを買おうと思っておられる方、家を建てよう・買おうと思っておられる方、あなたが今からする契約は「売買契約」ですか?「請負契約」ですか? よく見てみて下さい。

 ついでに付け加えておきますが、「請負契約」も図面や仕様書がなければ成立しませんよ。さらについでですが、その図面通りできていることを確認する人はあなたもしくはあなたの代理人(設計・監理者)しかいませんよ。工事を請け負う業者がすべてきっちりやってくれると思えるほど信頼できますか? もう一度、その契約、見直してみませんか?