作法

 昔は(今も?)敷居や畳の縁を踏んではいけないと言われる。私も敷居や畳の縁を踏んではいけないと祖母によく怒られた。

 しかし、なぜそうしてはいけないかは聞いたことがなかった。というより理由なんて気に留めたことがなかったのである。
 
 大学で建築を学び始めてそのことを思い出し調べたことがあったので紹介します。
ちなみに当然ですがそのようなことは大学の授業では習いません。(雑談くらいではあったらいいのにと思いますが。)

 なぜ、畳の縁や敷居を踏んではいけないのか?
玄関の引き戸、襖(ふすま)、障子など、一般家庭にも様々な敷居がありますし、畳には縁があります。昔からこれらを踏んではいけないと言われているのは、幾つかの説があるようです。

1. 身を守るための戒め
昔は、忍びの者が座の下に忍びこみ、畳の縁や敷居の隙間から漏れる光で相手の所在を確かめ、タイミングを見はからって刃を刺すこともありました。こうして命を落とすことは武士として大変恥ずべきことだったため、それを避けるための戒めが、和室のマナーになった。

2.家や家人の象徴として重んじる
「敷居をまたぐ」「敷居が高い」と いうように、敷居はその家の象徴なので、それを踏むことは家や家人を踏みつけることと同じと考えます。また、畳の縁はその家の格式を表しており、畳の縁に 家紋を入れることも多く、それを踏むことはご先祖様や家人の顔を踏むことになり、大変失礼なことなので、和室のマナーになった。

3.空間様式を崩さない
敷居には世間と家、部屋と廊下などを隔てる結界(境界のこと)の役目があり、畳の縁にはお客様と主人を区別する結界の意味があります。こうした結界を踏むことは空間様式を崩すことになるため、和室のマナーになった。

4.家を大切にする
敷居を踏むと磨り減ってしまいますし、家の建てつけが歪むこともあります。畳の縁も踏めば傷んでしまいます。そこで、家を大切にする気持ちとして、敷居や畳の縁を踏まないようにするようになり、和室のマナーになった。

 どれも、理由としては面白いがとりわけ私は「1.身を守るための戒め」というのが好きです。敷居踏むと祖母には、ご先祖様の頭を踏むことになると言われた。これは「2.家や家人の象徴として重んじる」そのものだろう。

 今となっては正確な理由はわからないとしても、そのような行為はあまり美しくない。
逆に旅館の女将さんなどが、歩幅も調整せずに敷居や畳の縁を踏まずに歩いている姿はとても美しい。

 このように、マナーや作法をさりげなく行うことが仕草や立ち振る舞いを美しく見せるのだろう。