結局「設計事務所」って何をするところなのですか?その2

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「結局「設計事務所」って何をするところなのですか?」に「何でもします。設計者とは依頼者の代理人です。依頼者がしたいと思ったこと、実現したいと思ったことを代行するのが設計事務所や設計者のつとめです。」なんて書いていますが、結局よくわからないですよね。

簡単にわかりやすく説明するのって難しいです。

で、ちょっと切り口を変えて、

「設計事務所」とかけて「海外旅行の現地ガイド」と説く

そのこころは・・・

もちろん語学力と探求心があればガイドなんて要りません。設計事務所なんてなくたって、その気があれば自宅の設計ぐらいできちゃいますので、確認申請の手続きやそういった「有資格者」でないとできない部分だけ頼めば、何ら問題なく自宅はできちゃいます。その資格だって自分で持っていればなお問題ありません。

ところで、「海外旅行の現地ガイド」に求められる資質って何でしょうか?

(1)当然ながらその現地の語学力

(2)交通機関や各種施設の手配などの調整力

(3)現地に対する知識量

(4)ガイドをする人の行きたい場所や好みを察知する感受性

(5)魅力的な場所や食べ物を提供できる企画力

こういったところではないでしょうか?

まぁ、ここまで書くとだいたいおわかりだと思いますが、この5つの能力は「設計事務所」に求められる資質と全く同じです。

(1)語学力

これは設計事務所の場合は、施工者とのやりとりに必要ですね。建築に対する知識(2)とも関連しますが、施工者に一目置かれる存在、というのはやはり”語学力”ではないかと思います。こちら(建築主)がしたいことを正しく施工者に伝える、施工者が困っていることやこうしたいと思っていることを、正しく建築主に伝える、いわゆるこういった「通訳」的な要素も当然持ち合わせることになります。

(2)調整力

海外旅行でも交通機関や行きたい施設などの予約やそれらの調整はとても重要ですが、建築も非常に大切です。たとえ戸建てであってもかなりの人や組織が動くことになります。土地を買えば不動産屋、ローンを組めば銀行、工務店etc・・・。何をいつまでにどうすればいいのか、ということをきちんと組み立てて、建築主に必要な情報を提供した上で、相談して決めていく、ということが常に求められます。

(3)知識量

これは、建築に対する知識、に他なりません。建築主から、どんな要望が飛び出してくるかわかりません。現場からどんな想定外な事が起こるかわかりません。それらに適切に対応するには知識量をおいて他なりません。

(4)感受性

依頼者がどういった嗜好を持っているのか、をまず把握しないことには、どこに連れて行ったらいいかわからない、ということになります。建築主がどのようなものを望んでいるのか、どういった空間が好みなのかを感じて実現する、この能力も非常に大切です。

(5)企画力

建築主の希望をすべて盛り込めばいいか、というと必ずしもそうではないでしょう。時には建築主が思いもよらなかったすてきな空間や建物を提案する能力も設計事務所に求められます。海外旅行に行ったときに、必ずしも「明確に行きたい場所」があるわけではありません。時には、「この国らしいところ」とガイドさんに依頼することがあるかもしれません。そのときに、<i>めくるめく魅力的な体験</i>、ができるといい旅行になるでしょう。それと全く同じですね。そういった体験を企画できる能力も設計事務所には必須ですね。

つまり、設計事務所というのは、建築ナビゲーターである、といってもいいかもしれません。

あなたが一人で知らない国に海外旅行に行ったときに、空港で声をかけられたタクシーの運ちゃんに、思いっきりぼったくられるかもしれません。ふらっと入った店が余りおいしくないレストランかもしれません。ガイドブックに載ってるまま観光地を回ったけど結局余り感動できずにテレビで見ているのと何ら変わらないかもしれません。

こういった経験も、短い旅ならおもしろいかもしれませんし、出費もそれほど大きくないでしょう。日本に帰って友達に笑い話の一つでもできるでしょう。

これが自宅だったら・・・

新聞折り込みに入っていた建て売りで買ったら、ぼられた・・・

ふらっと入ったモデルルームでマンション買っちゃったけど完全に満足できない。

いろんなメーカーを回ってものすごく吟味して自宅建設に至ったけどあんまり感動できない。

なんてことになってしまい、一生に一度の大きな買い物。後悔してしまったら、笑い話にもならないですね。

もちろんガイドはなくても海外旅行は楽しいかもしれません。同じように、設計事務所に頼まなくても自宅建築も楽しいかもしれません。でも、ガイドがいればもっと楽しいかもしれません。

設計事務所って、そんな存在なのかもしれません。

依頼者にとっては、この5つのチャートがあれば設計事務所も選びやすくなるのかもしれませんね。

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