地下鉄で携帯電話を振ってみよう!

ちょっと前に、当事務所内でも話題になったのですが、先日私は地下鉄に乗っていて女子高生が携帯電話をいきなりシェイクしたのを目撃しました。

「???壊れたの?(関西人(?)はテレビが壊れるとバシッと叩いたりします。そしたらなぜかうつるようになるのですが、これは私が子供の頃のチャンネルをがちゃがちゃと回すタイプの奴だからでしょう。いまでも時々叩いたりしているのでしょうか?)」と思ったのですが、どうやらそうではないみたい。隣のお友達の女子高生が「もう一本!」とか合いの手を入れていたので、「よっ、大統領!」とかけ声を入れてもよかったのですが、どうやら

携帯電話の受信状態が悪いと振れ(シェイクすれ)ば改善される。

と、真剣に思って、そう信じているようです。

なんと画期的な携帯だ。そこまで進化したのかと思ったのですが(嘘)、その後も街で携帯をシェイクするハードロッカーな若い女性を何度も地下街で見かけました。

大阪だけかと思いきや、お江戸でもそうらしい。

私は、技術者です。ばりばりの理系人間です。突き詰めると、原因・理由・成り立ちを考えて、総合的に判断するのが仕事です。「携帯電話を振ると受信状態がよくなる」という思考はどう考えても科学的ではない。まぁ、映らないテレビを叩くのも一見非科学的ですが、あれは昔の半田付などで結線部分の接触不良がなおるとか、そんなことが理由なのでしょう。それでも叩きすぎると本当に壊れますけどね。

まぁ、女子高生の話はいいとしても、最近いろんな所で「技術者のはずなのに科学的でない。」人が非常に目立ちます。私は特に理系の学部出身で、未だ理系学部学生に指導したり共に研究したりする立場にもありますので、「非科学的」理系学部生が目立つようになったことを危惧しています。一言で「ゆとり教育」の弊害だとは思っていませんが・・・。
と、ここまで書いて、ちょっと前に偽メール事件で時の人となった、「前衆議院議員 永田 寿康」氏を思い出しました。なんと彼は、東京大学工学部出身です。ばりばり理系です。それも日本の最高学府といわれている大学の。

ホリエモンと自民党間にお金のやりとりがあったかどうかは知りませんが、その指示メールが手に入った。ガセかもしれない、本物かもしれない。誰しもそう思うでしょう。そう思ったら、その時に普通なら「裏をとる」でしょう。「本物か偽物かを検証する」という、理系の実験大好きな学生は間違いなくそうするでしょう。検証の仕方は色々あると思います。

永田氏に代表されるように、「科学的に裏をとる」能力に欠ける人が多いように感じます。

建築の世界とは間違いなく科学的な世界です。もちろん芸術的な側面は持っています。美しくないといけないと言うのはこれまでこのホームページでも訴えてきました。しかし、同時に、安全で快適でなければいけません。安全で快適であることと言うのは、きちんとした科学的な検証の上に成り立っているわけです。

ところが、一般の人と建築業界を結びつける役目であるはずの「設計事務所」が時に「非科学的」な場合がよく目にします。私も仕事柄、メーカーから「うちの商品が一番いいです。」「こんな新しい工法を発明しました。画期的です。」という売り込み、施工者から「設計図はこう書いていますが、このようにさせて下さい」という申し入れ、多々あります。

その時、

もし本当に「一番いい商品」であるならば、世の中全てそうなっているのではないか?
そうならないと言うことは何らかの理由(欠点)があるのではないか?

と疑ったり、

施工者が「こうさせてくれ」という理由は何なのか? 
施工がやりやすいから? 工費が安くなるから? 
そうした場合、他の不具合が生じないか?

と再検証する
ことが大切であり、それは第三者の立場である設計事務所にしかできない仕事です。

そんなわけで、少なくとも私はそのような検証をした上でないと結論を出しません。
ただメーカーや施工者のいいなりになるようであれば、設計事務所なんて単なるブローカーでしかないですし、そもそも一般消費者にとって不要な存在でしかありません。

私は学生には必ず「本やメーカーなどが発信する情報は常にメリット(いい面)しか出さない。デメリットを検証する能力をつけないといけない。それが真のエンジニアである。」といっています。