昨年11月に発覚した「構造計算偽造事件」ですが、その後に書いた記事についてカテゴリーを作ってまとめました。
カテゴリー「構造偽造関連」
全ての記事を読んで頂いたら私の言いたいことがわかるとは思いますが、私が今の段階で考えていることを簡単にまとめます。
■建築士関係
・建築士の何らかの団体への強制加入
(建築士法上は建築士会になると思いますが、既存の士会は適切だと思えません)
・建築士会の権限拡大
(違反建築士の除名や業務停止処分など、専業か兼業か過去の賞罰なども常に把握、公開するようにする)
・建築士の登録更新制度導入
(更新の際に実施した物件などを申告)
このあたりの話しは、シリーズ”住まいを手に入れる”でまとめています。建築士が背筋を伸ばして仕事をするためには購入者・消費者の「監視」が必要です。みんなが注目することがもっとも確実な方法です。
■建築確認業務関連
・基本的に今の制度のままで充分だと思うが、設計者・監理者の統計は必要だと思う。
(どの程度の実績があるのかの目安にはなると思います。もっとも、多いからよい、少ないからだめという単純なものでもありませんが。)
これは当ホームページで有名な「確認申請と完了検査(1) (2)」というのをちょうど1年前(2005年01月)に書いております。確認申請業務は今のままでよいのではという主張です。
■保険について
・建売・分譲マンションの場合(売買の場合)は、保険の強制加入が必要。
・請負については、任意加入でよいと思う。
今回のような悪意を持った事件以外にも、いろいろと欠陥・不具合はあります。そのための保険というのは実に有用だと思います。しかし、その内容は、売買契約と請負契約によってかえた方がいいと思っています。売買契約と請負契約は大きく異なるからです。(これも当ホームページの「工事請負契約と売買契約」を参考下さい。)
保険というのは、原則として事故が生じた時に保険金を受け取る人が掛け金を払うと言うことですから、売買の場合は万一に備えればよいでしょうし、請負の場合はそれもひっくるめてはいるか入らないか、ということでいいのではと思っています。
なんだかまとまりが無くてすみません。ご意見ご質問は、直接メール(hashimoto@pap-pro.com)頂くか、コメントからどうぞ。
コメント
投稿者 伊東 理豫子 : 2006年02月04日 10:08
設計の関係者なら「東横イン」の検査後の増改築は看破出来なかったのでしょうか。強制加入も名案だと思いますが、告発や指摘をすれば報奨金がもらる、もしくは優良設計関係者バッジがもらえる、などというのはどうでしょうか・・・
投稿者 橋本@こま設計堂 : 2006年02月04日 11:31
弁護士は弁護士会へ強制加入です。医師は違うようです。その代わり専門医制度というのがあります。同じぐらい重責を担っている建築士にはそういった制度がありません。制度がないから重責を担っていると思っている人が少ないのかどうかは別として、もっと多くの人の目に建築士がさらされることが必要です。そうすることでいかに社会からの期待が大きいか、責任が重いかを感じると思います。といっている時点で”甘い”のかもしれませんが。
私は普段プライベートで街を歩いていて工事現場に出くわすと、職業柄それとなく見るのですが、見えている範囲でも、「おや?」と思うような”怪しい”現場がたくさんあります。構造的に大丈夫かなぁとか基準法違反していないかなどは何となく見ていてわかるものです。しかし「怪しい」と言うだけで、図面や計算書を確認しない限り「間違っている」とはいえません。しかも図面や計算書は第三者では手に入りません。例え手に入ったとしてもそれをチェックするのに相応の時間が必要です。そんなわけでなかなか指摘できないと言うが現状です。
また、「東横イン」のような検査・引渡後の物件で建築主が勝手に改造したことに関してはますますわかりません。そうなれば内部告発しか手はありません。同時に私は「建築主」となる以上は「最低限の建築関連法規の知識」は知っておくべきだと思っています。「建築のことなんて専門的すぎてわからないから・・・」とあたかも”善意の第三者”を装いますが、「経理や福利厚生なんて専門的すぎてわからない・・・」という社長と同じです。そんな社長のいる会社信用できますか? わからなければ、自分で勉強するか、専門家に依頼して処理してもらえばいいのです。
告発者に対する報奨制度の是非は様々な意見があります。現在、内部告発者保護制度導入が検討されていますが、「ルールを守る」というのは人間が秩序ある人間社会を形成するためのもっとも基本です。私たちは幼稚園の時からずーっと言われ続けております。しかし、最近この”秩序”が微妙に乱れてきています。それは報奨金で解決する方がいいのか、教育で解決する方がいいのか。どうなんでしょうね?