建物の取引の形態には「工事請負契約」と「売買契約」という2つがあります。
「工事請負契約」とは、設計図面と請負契約約款、仕様書などをもとに”工事を請け負う”という契約をすることです。つまり、この書類の内容の工事を請負代金○○万円として実施することを両者が合意することになります。なんだかわかりにくいですね。もう少しわかりやすく説明しましょう。
要は契約書になってしまった図面や約款、仕様書などに求められた建物を、業者はなんとしてでも完成させなければ行けないということです。業者の見積金額から算出された請負金額は見積落ちがあったとしても、計算間違いがあったとしても、それは業者の責任であり、その金額をもとに両者が合意したわけですから、図面などに改訂ある項目に追加や変更がなければその金額を変更することはできないわけです。
よく工事請負契約のなかに「見積書による」という事を書いている場合がありますが、本来は正しくありません。見積書が契約の目的物になることはないからです。見積はあくまでも参考資料です。最優先は、図面であり仕様書です。
つまり、工事業者は「図面や仕様書通りの工事をやります。」ということと発注者(建築主)は「そのための費用として○○万円を支払います。」ということを契約するのが工事請負契約です。
一方「売買契約」は一見聞き慣れない言葉かもしれませんが、日常の私たちの商取引のほとんどがこれですからイメージしやすいと思います。つまり、「目の前にあるこの商品」=「○○円」という取引です。「原則として現物を引き渡します。」という契約になります。建て売り住宅や中古住宅の取引がこの形態です。日常でも、八百屋さんでトマトを買うとか、服屋でシャツを買う、というのは売買契約です。購入者がものを見て、そのものに対する値段が納得のいく値段であれば、取引が成立しますし、値段が高いとか商品が悪いといった理由で納得がいかなければ買わないと思います。
売買契約の場合は、買った商品に対して隠れた瑕疵(欠点)が無ければ成立した契約に対して文句が言えません。たとえば八百屋で買ったトマトがまずかったといった場合です。まずいからといって交換してくれといっても、それを見てかったのだから仕方がないといわれるでしょう。隠れた瑕疵、たとえばそのトマトを切ってみたら腐っていた、等であれば取り替えてもらえるかもしれません。
請負契約の場合は、少し異なります。たとえば「クリーニング屋さんにワイシャツのクリーニングを依頼したところ、洋服に新たなシミが付いていた。」といった場合です。当然クリーニング屋さんはワイシャツをきれいにすることを”請け負った”わけですから、きれいになっていなかったらクリーニング屋さんの義務を果たしていないことになり、再度「きれいにして下さい」と要求できます。しかし、あらかじめこのシミは落ちなくても仕方がないですよという条件で納得の上で、依頼したのであれば、たとえそのシミが落ちていなくても仕方がないと思わざるを得ません。
売買契約と請負契約の違いがわかってきましたか?
で、私が問題にしたいのは、マンションの買い方です。
現在世の中で一般的に流通しているマンションのほとんどは「売買契約」です。
というわけで、長くなったので、この話はこの次で。