建物を所有するということ

しれっとゴールデンウイークも始まり、初日土曜日と本日日曜日は非常にいい天気で、気温もよく最高のスタートを切ったように思います。当事務所は休みにあまり関係なく絶賛営業中ですが、昨日午前中はマンション大規模修繕工事の定例会議、午後はあまりにもたまった仕事を一気に片付けるべく事務所に缶詰。そして今日午前はリフォーム工事の打ち合わせ、午後は住宅展示場にて無料相談会の相談員をやっています。少しお客さんが途切れたのでこれを書いているという、昼下がり2時前。

住宅展示場には、気候も良くなり、世の中も少し明るさが見えてきて、「家でも建てるか」というようなファミリーがたくさんおられます。それ自体はとてもいいことだと思います。一方で仕事上様々なタイプの建物所有者を見かけると、本当にこれでいいのか?と感じることがしばしばあります。今日はGW初日もかかわらず、そんな少し耳の痛いお話を。

先日お会いした建物所有者(賃貸マンションのオーナー)は久しぶりにびっくりしたタイプでした。まずもって建物を適切に維持することや建築関連法規を守ることには関心はなく、いかに利益を上げるかがそのオーナーの行動原点だと言わんばかりのタイプ。新築時からのオーナーですが、「図面はありますか?」「ありません」「確認申請図書は?」「ありません」「完了検査は?」「当然受けていません」とのこと。

私はそのビルの所有者と関係はないのですが、「あんたら、これ塗装するんか?防水直すんか?防水なんかシーリングでクチュクチュっと塗ったら直ると思うけどね。外壁なんて塗装せんでもまだまだいけるけどな。」と。

建物も基本的には私財ですから、所有者がなりふりを考えればいいとは思う反面、ある一定の公共性も持ち合わせていると思います。意匠性や外観については、汚い廃屋があろうときらびやかな館があろうと構わないですが、一旦その建物を使う側の立場になった場合(今回の建物場合だと賃貸住宅なので借りて住む人がいます)、例えば給排水衛生設備工事が適切に安全に維持管理されていることは最低限の条件だと思いますし、外壁が落ちてきたり、屋根材料が飛散するようでは近隣に影響が出ますし、自分(建物所有者)だけよければいいんだではすまされません。

漏水も一時的には止められたとしても、すぐに再発するような補修では、貸す人も借りる人も気持ちのいいものではありません。違法状態であったり、危険な状態であったり、まして受水槽などの上水設備の清掃が行き届いていないなんていうのは、もってのほかだと思います。技術的なことではありませんが、固定資産税や都市計画税の滞納はないのか?とまで疑ってしまいます。

少し刺激的な言い方をになりますが「建物を適切に維持管理するつもりがない人は、建物の所有者になるべきではない」とすら感じてしまいます。賃貸住宅の場合はなおさらです。ヘタするとその建物に住む人や近隣に被害が及ぶことになります。そうなると所有者が好きにすればいい、とはいえません。

そういった意味でも、建物には一定の公共性があると思います。戸建住宅も全く同じです。維持管理が悪くて所有者のみが困る状況になるのは仕方がありませんが、周りに危害を加えるようにならないようにするのも所有者の最低限の責務だと思います。

最もそんな適当な所有者の建物は自然淘汰されて使わなくなるよ、という意見もあります。しかし、その建物が適切に維持管理されているかどうかは、私達建物の専門家ならばわかりますが、普通の人は見てもわかりません。まして、一見して綺麗に見える建物の設備が適切かなんて、余程のことがない限り、一般の人にはわかりません。つまり被害を被るのは何も知らない人ばかりです。そんな状態は決して健全な社会だとは思いません。

言い換えます。「建物を適切に維持管理する覚悟のない人は、建物を持たないでください。」

付け加えます。「私達建築士は、建物を適切に維持管理するノウハウを持っています。私達を大いに使ってください。」と思っています。

そして、当事務所では、建物維持管理に関するお手伝いも当然させて頂いております。また、当事務所で新築・リフォームされた建物は、とことんお付き合いしていきたいと思っています。

そこまで考えて、そこまで覚悟して、建物を所有してもらいたいと切に願います。そして、いい設計者・いい技術者と出会ってほしいと思います。