確認申請と完了検査-2

 さて、建築確認申請はたいていの建物でしているようです。ところが完了検査となると、受けていない建物が多いのです。資料は古いですが、大阪府下の着工件数に対する完了検査受験率は平成13年度56%だそうです。つまり、全体の半分程度が完了検査を受けていないことになります。ちなみに、全国平均が63%なんですけどね。(多いとは言えません・・・。)(参考:第 2 次大阪府建築物安全安心実施計画 )


 この統計値も建物全体ですから、住宅に限って言うともっと受験率は減ってくると思います。


 なぜか? わかりやすく言うと、確認申請通り作らない、つまり、違反をしているから受けたくても受けられないということになります。建築基準法の違反というのは様々あります。面積(建坪率・容積率)の違反、防火規定の違反、構造の違反、階数・階高の違反、などなど。軽微なものから深刻なものまで様々ですが、この完了検査を受けないと言うことが欠陥住宅温床の背景になっているのは事実です。


 ちなみに、完了検査を受けないと20万円の罰金刑が建築基準法では決められています。この罰金刑を受けるのは申請者である建築主です。


 住宅金融公庫では昔から完了検査を受けていない建物には融資をしていません。(とも限らないようですが。少なくとも表向きはそうです。)最近になって国交省のお達しにより、銀行も完了検査をしていない建物に対して融資をしないことになっています。


 さて、なぜ検査をしないのか、のもう一つの背景に、行政の体制が十分ではないと言うのがあります。我が国では、年間約110万件の着工戸数があり、それに対して建築主事(確認申請や中間・完了検査をする資格を有する人)が約1800人しかいません。つまり一人の主事が年間約600件の建物を処理しなければいけない計算になります。また、建築行政に携わるスタッフの数も、人口10万人に対してアメリカ25.7人、オーストラリア23.0人に対して、僅か5.8人しかいないのも大きな要因です。


 そこで、平成12年から建築基準法が変わって、確認申請や中間・完了検査を民間に開放し、なるべく多くの確認申請や検査をできるように政府が考えたわけです。まぁ、ある一定の評価はしたいと思います。でも、私は基本的に民間にそういった仕事を任せるのは嫌いです。基準法等は行政が責任もって守るべきだと思っているからです。


 行政として法を守るのと、民間の営利目的の団体・企業が商売としてするのでは大きく異なると思います。ちょっとたとえは変ですが、駐車違反の取り締まりを民間に開放するようなものです。駐車違反が減るとは思えません。取り締まり側と違反側に不正なやりとりが起こらないとも限らないからです。


 現に、時々民間の審査機関は「疑わしい」事があります。


 もっとも、それぐらいの仕事(確認申請や検査業務)は行政でやりなさいと思うからです。もし、それに当たる職員が足りないようならば増やせばよいと思います。そういったものに費やす税金は喜んで払います。というより、人事をうまく調整すればできなくもないような気もしますが。


 故に私は民間には出さずに、必ず市役所等に出します。民間は本当にいい加減です。(役所も変わらないかも知れないが・・・。)極端な話、いくらか握らしたら何でも通すんではないかと思うこともしばしばあります。民間の審査機関からすればこちらはお客さんだから、へいへい言うのも仕方ないかも知れませんが、


 また、大手のハウスメーカーや建売業者などが、自分の所の建物の申請や検査を通りやすくするために、自分たちで出資して審査機関を作ることもできます。(そうしてるところもあるようです。)


 いずれにしても、きっちりと建築基準法を守れる体制を整えることが大切ですし、それ以上に設計者・監理者が当たり前のモラルを持つ、一般の人はモラルを持った人に頼む、ことが大切です。完了検査は決して受けなくてもいいものではありません。