program2023

- Greeting -
 「フェッセルン・アンサンブル第27回定期演奏会」にご来場いただきましてありがとうございます。新型コロナウイルスに振り回される毎日も終わりが見えてきたのでしょうか?もうこりごりと思っておられる方も多いとは思いますが、新型コロナウイルスのおかげで気づいたこともたくさんありました。
 
絵画や彫刻などは写真や仮想空間で楽しむことができます。音楽をはじめとした舞台芸術も映像と音をリアルタイムで全世界に伝えることができます。これは特別新しい技術ではなく、コロナ騒動の前から普通に行われてきました。コロナ騒動によって、本物を見たりさわったりする機会、五感でその空間を感じること、人とその空間を共有することに待ったがかかりました。
 技術はいつでもどこでも誰でも簡単に便利であるように追求し進化します。コロナ騒動でより簡単により便利になったのは間違いありません。一方でそれだけでは寂しさや物足りなさを感じることにも気づきました。より忠実に伝えようと技術が進化してもそぎ落としているものがたくさんある事に気づきました。
 言い換えると、それは私たちが今実際に感じていることは膨大な情報量であり、とてもデジタル技術に変換できるものではないということです。

 本日はモーツアルト特集です。ご承知の通り、モーツアルトの楽譜は非常にシンプルです。そして本日取り上げた曲は、モーツアルトが30歳前後、今風に言うとアラサーの時、ウィーンに住んでいた脂ののっていたときに書かれた曲です。どれもとてもいい曲です。今の技術であれば入力して極めて精密にコンピュータ音楽として再現することは非常に簡単です。でもおそらくそれでは物足りないと思います。
 人間の演奏は正確さではコンピュータに劣ります。それでも同じ空間に集まり何人かでひとつの音楽を作り上げていく過程には人に訴えかけ、人の心を動かす力があります。数値化できない、デジタル化できない”何か”があります。それを少しでも感じていただきたいと思っています。

 本日は、ご来場・ご視聴くださいまして誠にありがとうございます。音楽は私たちの生活に無くてはならないものだということを感じつつお楽しみください。
- Program -
モーツアルト
 Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K.525
Eine kleine Nachtmusik K.525
Ⅰ: Allegro
Ⅱ: Romanze Andante
Ⅲ: Menuetto: Allegretto
Ⅳ: Rondo Allegro
クラリネット :橋本 頼幸
永山 烈 
ホルン :杉村 由美子
木下 洋輔
バソン :瀬尾 哲也
< 休憩 ~ Intermission ~>
ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478
Piano Quartet Nr.1 g-moll K.478
Ⅰ: Allegro
Ⅱ: Andante
Ⅲ: Rondo : Allegro moderato
ピアノ :手嶋 有希
ヴァイオリン :宮木 義治
ヴィオラ :橋本 喜代美
チェロ :森田 尚美
< 休憩 ~ Intermission ~>
三重奏曲 K.498 「ケーゲルシュタット」
Piano Trio Nr.2 Es-Dur K.498, “Kegelstatt”
Ⅰ: Andante
Ⅱ: Menuetto
Ⅲ: Rondeaux: Allegretto
クラリネット :橋本 頼幸
ヴィオラ :橋本 喜代美
ピアノ :木田 淳
    
- Program Notes -
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K.525
モーツアルト

 

 1787年に書かれたこの曲は、モーツァルトの作品の中でも最もよく知られているものの一つでしょう。クラシックに興味がなくてもこの曲だけは耳にしたことがある、という人は多いのではないでしょうか。もっとも、誰もが知っているのは、第1楽章の冒頭にあたる軽快な部分に限られるかもしれませんが、その後に続く柔らかく美しい旋律が印象的な第2楽章、明るく華やかな第3楽章、躍動感にあふれた第4楽章と、どこをとっても素敵な曲となっており、流石モーツァルト!と思わせてくれます。 どの楽章も聴者にとっては耳に馴染みやすいのですが、反面、奏者にとっては油断できない部分が随所に含まれ、この点についてもモーツァルト感を十二分に感じられる曲です。本来は弦楽四重奏にコントラバスを加えた五重奏、または弦楽合奏で演奏されるこの曲を、今回は変則的な管楽器5本の編成でお送りします。是非、弦楽器のイメージと重ねあわせつつ、その違いをお楽しみください。 (A.Nagayama)
ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478
モーツアルト

 

 出版社の依頼で3曲セットのピアノ四重奏を作曲することになり、初めに完成したのがこの第1番。ところがアマチュアが演奏するには難解すぎるとの物言いがつき、結局この出版社からは2番目の曲のみが発表され、当初想定していた3曲シリーズものとしては完成しなかったそうです。モーツアルトにしては珍しい短調(全体の5%くらいだそうです!)であったことが大きく影響したことは想像に難くありませんが、随所に美しい旋律やドラマチックな展開が散りばめられており、時代の先端を行く天才が、大衆に完全に受け入れられるには時間がかかるということを如実に表しているエピソードのようにも思います。まるで何かにせき立てられているような緊張のなか曲が進む第一楽章、一転して何かを懐かしむような穏やかな第二楽章、ウキウキ感が抑えられず踊り出してしまいそうな第三楽章と聴きどころの多いこの曲をお楽しみください! (Y.Miyaki)
三重奏曲 K.498「ケーゲルシュタット」
モーツアルト

 

 1786年30才で作曲された通称「ケーゲルシュタットトリオ」は、当時まだ新しい楽器であったクラリネットとヴィオラとピアノという当時珍しい組み合わせの三重奏で演奏されます。クラリネットはもちろん名手アントン・シュタッドラー、ピアノはモーツアルトの弟子フランチェスカ、そしてモーツアルト自身がヴィオラを演奏して初演をしたと言われています。クラリネットをヴァイオリンに置き換えての演奏も可能ですが、ヴァイオリンにはないこの絶妙な組み合わせによる響きが後の室内楽とクラリネットに与えた影響はかなり大きいです。この組み合わせの室内楽曲はシューマン、ライネッケ、ブルッフにフォローされ名曲が生まれます。ケーゲルン(当時はやっていたボーリングの原型と言われている遊び)をしながら作ったと言われていますが、天才モーツアルトは美しさのみならず、各々の楽器の可能性を追求して、なにより楽しんでいけいけで筆を進めたであろうことがにじみ出ています。 (Y.Hashimoto)
- Members -
木田 淳(Jun KIDA); ピアノ
2021年からフェッセルンに仲間入りした木田さん。セレブな雰囲気を醸し出しているのにもかかわらず、話をするとK-POPの話で盛り上がれる、とても面白くてチャーミングなお人柄です。そしてなんと、このアンサンブルに参加するまでメトロノームを使って練習したことがないんだそう!そんな凄腕な彼女の素敵なピアノが奏でるモーツァルトをお楽しみください。
木下 洋輔(Yousuke KINOSHITA); ホルン
Qちゃんこと木下さんは、普段は人工衛星をつくるお仕事をしています。星をつくるなんてロマンがありますよね!もちろん、大変なお仕事ですから、出張やら打ち上げにまつわる苦労やら、色んな事が起きるみたい。でもそのお忙しい合間を縫って、ホルンを吹いたり、編曲したり、最近はヴァイオリンも弾いているらしいですよ。今日はそんな多彩な活動のうちの一つ、ホルンの腕前をご披露いたします。
杉村 由美子(Yumiko SUGIMURA); ホルン
杉村さんは各所での音楽活動はもちろんのこと、世界情勢や政治への関心、書評、寺社仏閣巡り、酒食等々においてその積極性と行動力を遺憾なく発揮しておられます。SNSには朝昼晩、多岐にわたる彼女の投稿がトップ付近にあがってくる次第。若い雰囲気を保っておられる秘訣は、いろいろなことに興味を持ち続けていることと、行動にうつせる積極性と体力にあるのだろうなと感心することしきりです。
瀬尾 哲也(Tetsuya SEO); バソン
瀬尾さんのお持ちの楽器を注目ください。知ってるものとは何かが 違う。そう、ファゴットではなくバソンなのです。初めてのアンサンブルで音が何か違うなという感想を持ちました。 ファゴットよりも温かくて表情豊かで、その人となりを表しているような感じがします。まさにアンサンブルのための楽器、色々な編成のアンサンブルに顔をだしまくっている瀬尾さんにぴったりの楽器、ぜひご注目ください。
手嶋 有希(Aki TESHIMA); ピアノ
真面目で熱心な手嶋さんはいつも真摯にピアノに取り組まれ、ブラッシュアップされます。私なんかにも音の出し方や指の使い方を聞いてこられて、ピアノに対して真剣です。練習の時もズバリ正直な感想を言って下さいます。でも実はお互いK-POPが好きでピアノ以上に話が盛り上がります。K-POP話が尽きません。多分一日中でも話せるでしょう!またゆっくり
永山 烈(Atsushi NAGAYAMA); クラリネット
昔からアツい漢だ。どれぐらいアツいかというと最近流行のChat GPTに聞くと「プロレスラー」だと紹介されるぐらいアツいです。多分それは違いますが、私が知っている永山烈は昔からクラリネットを吹いています。もっと昔はバリトンサックスも吹いていたようです。たいてい2nd担当してくれるのですが、ただアツいだけではなくしっかり支えることができるアツい漢です。
橋本 喜代美(Kiyomi HASHIMOTO); ヴィオラ
何でも出来ちゃう喜代ちゃん。リングフィットで身体を鍛え、チクチク羊毛フェルトで可愛いらしいマスコットを作ったり、このパンフレットやポスターデザインなどを手掛ける多才ぶり!遡れば自身のウェディングドレスも作ったのだとか!凄すぎる!文武、芸術と多彩に芯を捉える音色を今年もお楽しみ下さい!(なお、褒め殺しによりオーバーキルされている模様・・・。)
橋本 頼幸(Yoritaka HASHIMOTO); クラリネット
演奏会は今回27回目を迎え、コロナ禍の渦中も毎年継続中。全てはメンバーに慕われる橋本君の「人徳」、「継続は力なり」も彼への言葉と思っている。いやまて彼は、やりたい曲をばっちり演奏、コロナ禍のネット配信導入から年々クオリティアップ、今回遂にアレンジャーデビュー。しんどくも楽しい「役得」もエネルギーな「継続して進化中」こそ彼を示すと。そして今回も全世界に彼の証を響かせる。
宮木 義治(Yoshiharu MIYAKI); ヴァイオリン
「もっと、こう!!熱く表現して!」と某Y氏に発破をかけられたのは昨年の打ち上げ。あれから宮木氏はフォーム、音色の改良に取り組んだ。毎日楽器に触れ、Youtubeでも弓の使い方、左手の押さえ方を研究。雪で練習に参加できなかった時も、オンライン・オンデマンドを駆使し遠隔参加。表現力の向上を探求し続けたこの1年。今日、某Y氏を含め、聴衆の皆をうならせることができるのか!乞うご期待!
森田 尚美(Naomi MORITA); チェロ
いつも大きなチェロケースを抱えて頑張って練習にやってくるふくちゃん。楽器の大きさゆえに体への負荷も大きく、いろいろなところが痛むようです。それだけに体のケアに関する情報に詳しく、バイオリン弾きの私も五十肩の予防改善体操を教えてもらいました(感謝!)。今日の演奏会では入念にストレッチして美しい音色を奏でてくれることでしょう!
現代生活はいつも効率を求め、無駄を排除しようとします。
それ自体は必要なことかもしれません。
一方で効率がよかったら、無駄がなかったら
豊かな生活になるのでしょうか。
そんな単純なものでもないことに  
新型コロナウイルスは   
気づかせてくれたのかもしれません。