program2022

- Greeting -
 「フェッセルン・アンサンブル第26回定期演奏会」にご来場いただきましてありがとうございます。新型コロナと戦争のことはあえて触れません。言い出したらとてもこの欄で終わりませんし、ここに皆さんは純粋に音楽を楽しみに来てくださっているので、もっと楽しい話をしましょう。

 今回取り上げるベートーベン、ネルーダ、ベルワルドの三人の作曲家は、それぞれドイツ・デンマーク・スウェーデン出身です。これらの国々は、バルト海を挟みながらつながっている3国です。ヨーロッパって広いようで意外と寄り添ってあつまっているのですね。”バルト”は、意味は違いますが同じ響きの単語にWald(ドイツ語の”森”)があります。
 また、私たちがクラシック音楽と呼んでいるものは18世紀からわずか200年ぐらいの間のもので、こちらも長いようで意外と短い期間ですね。そんな短い間に古典派からロマン派~近現代と音楽の様式も変わっていきました。ベートーベンが分類される古典派音楽から、ベルワルド、ネルーダの時代のロマン派につながっていきます。この二人の作曲家の名前は親しみのあるものではありませんが、ロマン派作品としてとても興味深い曲です。という諸々のパーツから、本日のタイトルは「ロマン派の森へ」となりました。

 ネルーダは昔話に付随した音楽を、クラリネット・ビオラ・チェロという珍しい組み合わせで書いています。子供に読み聞かせるお話につける音楽なので派手である必要はないのですが、なかなか楽しく、物語が思い浮かびます。ベルワルドも、楽器の組み合わせがなかなか珍しい曲です。1楽章が2・3楽章に比べて長くしつこいのはロマン派の特徴で、2・3楽章が変わった響きやリズムが出てくるのもロマン派の遊び心です。
 休憩を挟んで、ベートーベンのピアノ四重奏は15歳のベートーベンがモーツアルトに倣って作曲した曲で展開の仕方もそっくり。26歳の時の作品、六重奏op.71はベートーベンが古典派のスタイルを完成させたと思わせる曲です。本日はそのような順番でプログラムをお楽しみいただければと思います。

 お忙しい中、ご来場・ご視聴くださいまして誠にありがとうございます。「世界の狭さ」と「人間の持つ時間の短さ」に思いを馳せて、心ゆくまで音楽をお楽しみください。
- Program -
ネルーダ
 Franz Xaver Neruda (1843-1915)
三重奏曲「子供のための物語」Op.31 より
Musikalische Marchen Op.31
1:Allegro
5:Mahrisches Volkslied. Andante con moto
8:Allegro
クラリネット :橋本 頼幸
ヴィオラ :橋本 喜代美
チェロ :森田 尚美
ベルワルド
 Franz Adolf Berwald (1796-1868)
ピアノと管楽器のための四重奏曲 変ホ長調 Op.1
Quartet for Piano and Winds in E-Flat Major Op.1
Ⅰ:Adagio: Allegro ma non troppo
II:Adagio
Ⅲ:Allegro
クラリネット :橋本 頼幸
ホルン :杉村 由美子
バソン :瀬尾 哲也
ピアノ :木田 淳
< 休憩 ~ Intermission ~>
ベートーヴェン
 Ludwig van Beethoven (1770-1827)
ピアノ四重奏曲 変ホ長調 WoO 36 No.1
Piano Quartet in E-flat major WoO 36 No.1
Ⅰ:Adagio assai
Ⅱ:Allegro con spirito
Ⅲ:Theme and variations: Cantabile
ピアノ :手嶋 有希
ヴァイオリン :宮木 義治
ヴィオラ :橋本 喜代美
チェロ :森田 尚美
ベートーヴェン
 Ludwig van Beethoven (1770-1827)
木管六重奏曲 変ホ長調 Op.71
Sextet in E-Flat Major Op.71
Ⅰ:Adagio – Allegro
II:Adagio
Ⅲ:Minuet. Quasi allegretto
Ⅳ:Rondo. Allegro
クラリネット :橋本 頼幸
永山 烈 
ホルン :杉村 由美子
木下 洋輔
バソン :中田 慎一
瀬尾 哲也
- Program Notes -
三重奏曲「子供のための物語」Op.31 より
ネルーダ

 

 フランツ・ネルーダはブルノ(当時のハプスブルク家、オーストリア帝国)で生まれた音楽家です。デンマークでは、チェロの教授を務め、チェロ協奏曲や室内楽も書きました。Musikalische(日本語訳では音楽、ミュージカル) Marchen(童話、おとぎ話) は劇と言うよりは読み聞かせに音楽がついた物のようで、YouTubeで検索すると奏者と読み手が同じ舞台上で演じている様子が見られます。今回演奏する曲は短い9つの曲からなる、クラリネット、ヴィオラ、チェロのための三重奏です。「メルヘン」とある様に、動物が話をしたり、魔法使いや巨人といった魔法の助けを得るなどの空想的な要素があるようで、一つ一つは非常に印象的で、全体的に哀愁を感じる曲調です。今回はその中から1、5、8の3つを演奏します。どんな物語が広がるか、想像する事が出来たら嬉しいです。 (N.Morita)
ピアノと管楽器のための四重奏曲 変ホ長調 Op.1
ベルワルド

 

フランツ・アドルフ・ベルワルドは1796年生まれのスウェーデンの作曲家です。若い頃は王立管弦楽団のVn奏者をしつつ作曲活動をしていましたがあまり認められず、留学先のベルリンで生計のために整形外科医を開業したり、スウェーデンに帰国してもガラス工場の共同経営者をしたりしながら活動を続けた苦労人です。皮肉なことに音楽以外は早々に成功し、やっと音楽での評価を受けたのは晩年でした。その後に続いたスウェーデンの作曲家達には同国の「最も独創的で近代的な作曲家」とされ、北欧的感性の息づく作品達は高い評価を受けています。1819年作曲の若き日のこの作品は、当時の保守的な音楽界には早すぎたようですが、ロマン派時代の曲でありながら現代の北欧音楽にも通じるような雰囲気を感じていただければと思います。(T.Seo)
ピアノ四重奏曲 変ホ長調 WoO 36 No.1
ベートーヴェン

 

この作品は、ベートーベンが14歳の時に作曲され、彼の死後に出版された曲です。モーツァルトのバイオリンソナタをモデルにしたと言われており、特に第1楽章のゆったりとした優雅な雰囲気の中に出てくる細かいパッセージはモーツァルトの面影を感じさせられます。そこから激しく劇的に短調に転ずる第2楽章はベートーベンらしさが感じられ、第3楽章では、各々の楽器が掛け合う変奏曲というユニークな構成となっています。モーツァルトへのキラキラとした憧れと、自分の恵まれない家庭環境や父への反感・苛立ちという暗い気持ちをこの曲でどう表現をしたかったのだろうか、と思いを馳せながら演奏したいと思います。 (A.Teshima)
木管六重奏曲 変ホ長調 Op.71
ベートーヴェン

 

この作品は、9つの交響曲で有名なベートーヴェンが交響曲を作る前に作曲したものです。彼は1790年代後半に管楽器のための作品を多く残していますが、この時期に人気を博したクラリネットの名手ヨーゼフ・ベーア (1770-1819) の影響のようです。4楽章構成で、3楽章にメヌエット、4楽章にロンドを置く古典的な構成で、この後に作曲する交響曲の形を既になしています。ベートーヴェンは、管楽器を挑戦的に使うことが多いですが、この曲でも例外ではなく、一例をあげると、当時のホルンでは、普通の奏法では演奏の困難な超低音が登場したりします。本日は、編成は小さいですが、ベートーヴェンの交響曲の原型のような雄大な作品をお楽しみください。 (Y.Kinoshita)
- Members -
木田 淳(Jun KIDA); ピアノ
前回木管アンサンブルでデビュー、パワフルで切れのいい演奏が持ち味の木田さん。室内楽は経験が少ないないらしく、ニガテなのはなんと休符。合わせの練習で1・2・3・4と指さしでこっそり数えてたのは内緒です。今日も木管3人を支(したが)え、難曲を華麗に奏でます!
木下 洋輔(Yousuke KINOSHITA); ホルン
Qちゃんは今回六重奏の2ndホルンで登場です。一般的には1stホルンがソロを吹き、2ndがハーモニーの低い音を吹くことが多いけれど、今回はソロも低い音も両方ある難しい曲です。ぜひぜひ聴いてくださいね。ところでQちゃんの由来は?それは次回に乞うご期待。
杉村 由美子(Yumiko SUGIMURA); ホルン
オーケストラ、室内楽、ホルンアンサンブル、色々なところで活躍の杉村さん、今回はベートーヴェンとベルワルドの2曲を演奏されます。普通、どちらかに雰囲気が寄ってしまうのですが、見事に全然違う吹き方をしてくれます。同じ楽器でこうも違うことになるのはなかなか興味深いですが、誰でもできる話ではありません。お楽しみに。
瀬尾 哲也(Tetsuya SEO); バソン
京阪神を股にかけオーケストラに、アンサンブルにと精力的に活動する瀬尾さん。日々、バソン独特の妖艶なサウンドに磨きをかけておられます。穏やかで頼れるお人柄は、時に低音域でアンサンブルを支えるバソンさながら。今年も瀬尾サウンドにご期待ください!
手嶋 有希(Aki TESHIMA); ピアノ
力強いタッチと正確なリズムでアンサンブルを支えてくれる手嶋さん。今回のてしまかるてっとのベートーベンはピアノの見せ場が曲の随所に散りばめられていますので、是非みなさん注目してくださいね。弦トリオは足を引っ張らないように頑張りますので・・・(^_^;)
中田 慎一(Shinichi NAKATA); バソン
今回初参加の中田さんは、東(京)でバソン発表会があれば参加して華麗な演奏を披露し、西にメンバー不足に困るアマオケがあれば出演し助け、南の職場では激務をこなし、北の所属オケを中心に日夜情熱的に音楽に取り組む、サウイフスゴイヒトです。只々尊敬。
永山 烈(Atsushi NAGAYAMA); クラリネット
2018年以来の復帰となった永山先生は4年ぶりに颯爽と登場した。今回はパート練習なるものを四半世紀ぶりにやったが、25年前とそんなに変わっていなかった。変わらないことは良いことなのか悪いことだったのかはきっと今日のベートーベンが教えてくれるでしょう。華麗なクラリネットパートをお届けします。
橋本 喜代美(Kiyomi HASHIMOTO); ヴィオラ
いつも譜読み段階から合わせからリハーサルから本番まで、譜めくりをして下さり、室内楽初の私にアドバイスまで!もともと息子の学校の大先輩ママ。思い返せば保護者美術部でもいつも笑顔でアドバイス頂いてましたね!同い年ですが絶対敬語です笑
橋本 頼幸(Yoritaka HASHIMOTO); クラリネット
橋本氏と初めて出会ってから今年でちょうど30年になるが、当時から現在まで、驚くほど雰囲気に変化がない。演奏活動や仕事に対する有り余る熱意と企画力、行動力は、齢50を目前にした現在も衰えることを知らず、動きっぱなしに動いている。マグロは止まると酸欠で死ぬというが、彼もまたそうなのかもしれない。
宮木 義治(Yoshiharu MIYAKI); ヴァイオリン
宮木さんを知ったのはフェッセルンのコンサート。紹介文に『毎日楽器に触れる』とあり、背筋が伸びたのを覚えています。それから数年して、ご一緒するとは思わなかった!『動物のお医者さま』と言うマンガの台詞を(台詞になっていない所も)全部暗記しているとか、麻雀を愛しているとかも思わなかった((((;゚Д゚)))))))
森田 尚美(Naomi MORITA); チェロ
今年も韓ドラと脱出ゲームにハマっているふくちゃんさん。ネルーダの練習では橋本氏にだいぶしごかれてましたが、練習の度にどんどん成長!!カルテットの大黒柱として頑張って下さっています!本番でも深みが増した優雅なチェロの響きをお楽しみください。
ヒトのゲノムDNAの半分程度は
ウイルスとウイルスもどきの遺伝子配列が
占めているといいます
考えてみれば地球上ではウイルスのほうが
ヒトよりはるか何億年も先輩なので当然ですね
 一方地球上に陸地は3割しかなく
そのうち人類が安定して暮らせる場所は
さらにその半分あるかないか

そんなキュッと詰まったところに
たくさんのヒトが集まり
地球から見てごくわずかな時間
人間の一生を過ごしているのです
ウイルスに無駄におびえることも
わずかな土地を取り合うことも
 
地球規模ではちっちゃな話なんですけどね