program2015

- Greeting -
「フェッセルン・アンサンブル第19回定期演奏会」にご来場いただきましてありがとうございます。本日の演奏会のタイトルは「名曲の扉」としました。名曲の定義はなにかを考え出すと難しくなりますが、ごくごく単純に「良い曲だなぁ」と思うのが「名曲」でよいと思っています。何十年、何百年ものあいだ受け継がれて演奏されたスタンダードな「名曲」もありますが、陽の当たらなかった「名曲」もどこかにあるのかもしれない。それを「名曲の扉」という言葉で表現してみました。

 私のイメージする「名曲の扉」は、このような感じです。宇宙空間のような無限に広がるスペースに、曲が一つずつ入った箱があり、その箱の扉のデザインは全て同じです。その一つの扉を開けたときに、音が広がります。名曲が入っていることがあります。そうでもないときもあります。そんな箱が無数にちりばめられています。

 私は、その扉を開けるのがとても楽しみです。世の中には、全く聞いたこともない作品やほとんど無名の作曲家の作品がまだまだたくさんあります。扉を開けてみても心に響かない場合もありますが、時折「名曲」に出会うこともあります。それを取り上げて、こういった演奏会で演奏できることがとても楽しい瞬間です。室内楽は楽譜さえあれば、メンバーもそろいやすく比較的簡単に演奏できます。聞き尽くされた名曲もあれば、まだ陽の当たっていない名曲もあるかもしれません。誰かが掘り起こしたことで、注目されるようになった曲も、古今東西たくさんあります。何十年、あるいは、百年単位でほこりをかぶった「扉」の中に、「名曲」が入っている場合があります。そう考えると、わくわく、どきどきします。

 さて、そんな「扉」の中から、本日はモーツアルトの室内楽曲2曲とラブルというオーストリアの作曲家の最初の作品を取り上げました。モーツアルトの2曲は、「名曲」と誰もが認める曲だと思います。埋もれることなく200年以上受け継がれてきた曲です。一方、ラブルはその名前も作品もほとんど聞かれません。この曲は私が、ひょんなことでその存在を知り、楽譜を手に入れて、暖めること数年。やっと本日の演奏会に取り上げることができました。

 本日はお忙しい中、ご来場くださいまして誠にありがとうございます。皆さんと一緒に、わくわく・どきどきの「名曲の扉」を開けたいと思います。どうぞ、心ゆくまでごゆっくりお楽しみ下さい。
- Program -
W.A.モーツァルト
 Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458「狩」
String Quartet No.17 in B-flat major K.458 “Hunt”
Ⅰ.Allegro vivace assai
Ⅱ.Menuetto. Moderato – Trio
Ⅲ.Adagio
Ⅳ.Allegro assai
第1ヴァイオリン :宮木 義治
第2ヴァイオリン :熊田 千穂
ヴィオラ :橋本 喜代美
チェロ :梅本 直美
< 休憩 ~ Intermission ~>
W.A.モーツァルト
 Wolfgang Amadeus Mozart (1756-1791)
ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 K.452
Quintet in E-flat major K.452
Ⅰ.Largo – Allegro moderato
Ⅱ.Larghetto
Ⅲ.Allegretto
オーボエ :崎里 直己
クラリネット :永山 烈
ホルン :杉村 由美子
ファゴット :瀬尾 哲也
ピアノ :永山 愛美
W.ラブル
 Walter Rabl (1873-1940)
ピアノ、バイオリン、クラリネットとチェロのための四重奏 変ホ長調 Op.1
Quartet in E-flat major for Piano, Violin, Clarinet and Cello Op.1
Ⅰ.Allegro moderato
Ⅱ.Adagio molto
Ⅲ.Andantino un poco mosso
Ⅳ.Allegro con brio
ヴァイオリン :西川 友理子
クラリネット :橋本 頼幸
チェロ :梅本 直美
ピアノ :手嶋 有希
- Program Notes -
弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 「狩」
モーツァルト

 

 1783-84年作曲の6つの弦楽四重奏曲は、モーツアルトが特に敬愛していたハイドンに献呈された力作で、洗練された作曲技法だけでは無く彼の色々な感 情が詰まった、古今の弦楽四重奏曲の傑作として広く親しまれている。この「ハイドンセット」の中でも第17番「狩」は冒頭の快活でシンプルな旋律で聴く人の心を一瞬でとらえることの出来る、名曲中の名曲であろう。
叙情的で重厚な3楽章のアダージョや、情熱的な感情がほとばしる最終楽章もまた素晴らしく、最後まで聴く人を飽きさせない。今日は多くの方にこの曲の素晴らしさが伝わるよう、精一杯演奏したい。(Y.Miyaki)
ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 K.452
モーツァルト

 

 1784年に作曲されたこの曲は、モーツァルト自身が「最高の作品」というほど気に入っていたそうです。木管五重奏からフルートを外してピアノを参加させた珍しい編成となっていますが、これはモーツァルト自身が演奏に参加して楽しむことを前提としていたからかもしれません(フルートが好きではなかった、という理由もあるかもしれませんが)。全体として、木管楽器 とピアノの対比する形が多く見られ、木管楽器をオーケストラに見立てた「ピアノコンチェルト」と感じられるところもあります。しかし、これが単なる「ピアノ五重奏曲」とはならないで、どの楽器も目立ちすぎず隠れすぎず、絶妙のバランスが保たれているところが、流石モーツァルト、といったところでしょう。とはいうものの、やはりとりわけピアノが大変であることは間違いなく、終始気が休まるところがありません。ピアノの名手であったモーツァルトが「弾き終わる頃には疲れてしまった」と言った、という話があるほどです。奏者にとって大変な曲ではありますが、モーツァルトらしいアンサンブルの美しさを届けられるように演奏できれば、と思っています。 (M.Nagayama)
ピアノ、バイオリン、クラリネットとチェロのための四重奏 Op.1
ラブル

 

 ウィーン生まれの作曲家ラブルの名前や作品を聞いたことのある方は少ないでのではないだろうか?彼は30歳の頃には作曲活動をやめており、指揮者や音楽指導者としての方が有名である。現存する作品は15作ほど。この作品1は1896年(23歳)に、ウィーン楽友協会主催の作曲コンクールで優勝し、ブラームスにべた褒めされ、出版された曲である。巧みに構 成された曲で、性格の異なる4つの楽器をうまく使い分け、特徴を活かしまとめられている。メロディーも和音も非常に細かく検討されており、「狙った」作品とも言える。冒頭から各楽器に出番を作りながらテンポ良く展開し、美しさや技巧性、絶妙な転調など聞き手の心のつかみ方が非常にうまい。演奏している方も、聴いている方も十分満足ができる作品となっている。 (Y.Hashimoto)
- Members -
宮木 義治(Yoshiharu MIYAKI); ヴァイオリン
昨年惜しくも演奏会フル出演記録をストップさせた宮木さんが今年復活!音色が明るくなったと思ったら、奥様の楽器を弾いているそう。真面目ゆえの天然さは変わらず、練習時間も楽しませてくれます。毎月の印度出張の合間に中国出張も入るという超多忙な中、はるばる富山から大阪に練習に来てくれます。私とはマーラーの交響曲1番以来19年ぶりの共演、時を経て今度はどんな音楽が生まれるのか、ご期待ください。
熊田 千穂(Chiho KUMADA); ヴァイオリン
2回目の登場となりますちほりんこと熊田さん。同期だけにすでになじんでしまっている感があります。そんな彼女は、たとえ肩が凝ろうが親指が痛かろうが、はたまた自分の蝶柄ミトンは来年におあずけになろうが、愛する娘ちゃんのためにせっせとねこ柄ミトンを編む優しいお母さん。今日も優しい音色でみんなを包んでくれることでしょう。
橋本 喜代美(Kiyomi HASHIMOTO); ビオラ
毎年、演奏会のポスターを作ってくれているきよちゃん。一昨年からは演奏の方にも復帰、待望のヴィオラが加わり選曲の幅も一気に広がりました。今年は十年以上ぶりとなる弦楽四重奏ということでメンバー一同張り切っていましたが、なんと途中で肩を骨折するというハプニングに見舞われてしまいました。何とか演奏会までに傷が癒えて、きよちゃんの柔らかなヴィオラの音を皆さんに聴いて頂けることを願っています!
崎里 直己(Naoki SAKISATO); オーボエ
いつも可愛い娘さんと一緒に練習に現れる崎里さんは、2008、9年に続き3回目のご出演。お酒(特にワイン)がお好きだそうで、ワインに合うお料理のレシピを探してご自分でお作りになるのだとか。前回より15キロほどスリムになられ、健康維持と晩酌を楽しむためにジョギングとジム通いをされています。今年は厄年でトラブルが続いていますが、今日の演奏では管楽器のハーモニーを綺麗にまとめてくださると思います。
永山 烈 (Atsushi NAGAYAMA); クラリネット
今回初めてご一緒することになった永山さんは、最初「土曜日の練習は都合悪い」とお話されていました。お忙しいのだな、どういうお仕事してるのかなと思ってお聞きしたところ「学校の先生」でした。だからなのか、クラリネットの音も端正できちんとした感じ。練習中はいろいろ思い通りにいかなくて、苦戦しているときもありますが本番は「手のかかる子ほどかわいい」っていう言葉通りのモーツァルトになっていることでしょう。
杉村 由美子 (Yumiko SUGIMURA); ホルン
Fgの瀬尾さん繋がりから今回の参加となりました杉村さん。練習中は妥協を許さぬ生真面目さを発揮しておられる一方、降り番の際には、メンバーの子供たちの世話をしてくださる、頼れるお姉さんでもあります。とある占いで人生の中でも絶好調の時期!という杉村さん。男性陣3名の運気が最悪(厄年1名、その周辺2名)であるため、演奏でもぜひその強運を発揮していただきたいと思います。何卒よろしくお願いします、杉村さん!
瀬尾 哲也(Tetsuya Seo); ファゴット
8年連続出演中の瀬尾さんとは5年ぶり3回目の共演となります。瀬尾さんは実はファゴット、バソン、アルトサックスの三刀流の使い手。それぞれ指使いもまるっきり異なっているわけでして、アラフォーとなり様々な面で衰えを感じる私としては、よく混乱しないなぁと感心しきりです。そろそろバソンやサックスでのご登場も願いたいところですが、本日も本業のファゴットで下からアンサンブルをガッチリと支えてくださいます。
永山(梅田) 愛美(Manami NAGAYAMA); ピアノ
二人のお嬢さんのお母さん、永山君の奥さん、ピアノの先生など、何役もこなす永山さん。今回は、旦那さんとともに最大規模(本演奏会出演チーム比(^^; )のクインテットでのピアニストという大役をこなされます。客席と彼女との間には、4名ほど邪魔者がおり見えにくいかとは思いますが、「ピアノと管楽のための」のとおり、永山さんのピアノの活躍に注目してお聴きください。我々メンバーは配置上注目しにくいのが残念です…。
西川 友理子(Yuriko Nishikawa); ヴァイオリン
3年連続9度目。ほぼ出演と思っていたのに実は半分だった事にびっくりするほどの存在感のゆーちゃん。今回の曲は高音が多く大変なのですが、毎回コツコツとレベルアップし、綺麗な響きと芯の強い音で音楽も精神的にもリードしてくれています。バイオリンだけではない、多才な彼女の魅力的なバイオリンの音色を是非お聞きください。
橋本 頼幸(Yoritaka HASHIMOTO); クラリネット
ある時は設計事務所の所長、またある時は大学の先生、そしてある時はドラマの評論をメールで流し、たまーに焦ってクラリネットを吹く。私はどうやって24時間でこのスケジュールこなしているかわからない。世の中にはドッペルゲンガ―という現象があるが彼もまた3人いるのではないだろうか?普段の彼は「橋本A」または「橋本B」。そして今日は、普段と違う華麗にクラリネットを吹く「橋本C」くんをどうぞお楽しみください。
杉村 由美子(梅本 直美(Naomi UMEMOTO); チェロ
今回6年ぶり9回目の出演の梅本さん。チェロを弾くのはきっととても難しいと思いますが、「もしかして私にも弾けるかも!?」と思うくらいいつもさらりと安定した音を奏で、毎回的確な指摘でみんなをまとめてくれる一見クールなチェリスト。そんな彼女ですが音楽から離れて女子トークをしてみると、ほんわか天然な可愛いママさんです♪
皆さんは、
 私たちと一緒に「名曲の扉」を開くことができましたでしょうか? 今日一緒に開けた扉は、皆さんにとって「名曲の扉」だったでしょうか? もしそうだったとすると、私たちにとってとても嬉しいことです。
 来年は20回目になります。
 来年も今年同様に皆さんと一緒に
  さらに多くの「名曲の扉」を開けたいと思っています。
  また、来年お会いできることを、
  楽しみにしています。