program2021

- Greeting -
 「フェッセルン・アンサンブル第24回定期演奏会」にご来場いただきましてありがとうございます。24回のタイトルは、「燐~りん~」です。

 燐(リン)は、原子番号15番の元素で、元素記号はP、原子量は30.97、窒素族元素で、肥料の三要素の一つであり、マッチの材料として使われることで有名です。といういきなり化学の授業のようなスタートをしましたが、今回演奏会のテーマに選んだ言葉はこの元素の「燐」です。一方で言葉の意味としては、「しかばねから出る光。また、ほたるなどの火、鬼火(おにび)、狐火(きつねび)などとも呼ばれる」そうです。ぼーっという光も特徴的で幻想的なものとしてとらえられているのでしょう。

 そして、今年ベートーヴェン生誕250年という年に当たります。プログラムにベートーヴェンの作品を何らかの形で取り上げたいと思い、二曲組み入れました。ベートーヴェンの二曲(弦楽四重奏曲、フルート、バソンとピアノのための三重奏曲)はいずれも若い頃の作品です。ベートーヴェンがこれから輝くための要素が楽曲の中からほとばしります。シューマンの幻想小曲集、ライネッケのクラリネット・ホルン・ピアノの一種変わった組み合わせの三重奏は、一瞬の輝きだったり、円熟の輝きだったり、作曲家の、時代の、作品の様々な「燐」を見ていただけるのではないかと思っています。

 植物は成長に伴って土壌から窒素やリン・カリウムを大量に吸い上げるようです。低温で発火するリンの発見は人類に「火の使用」を身近にしました。私達の生活の中でもリンのような肥料は必要で、芸術・文化が身近にあることは人生を豊かにしますし、何よりリンのように輝けるから次に繋げられる。そんな演奏会にしたいなぁと思い本日を迎えました。

 本日はお忙しい中、ご来場くださいまして誠にありがとうございます。「燐」と輝く世界をお楽しみ下さい。
- Program -
ベートーヴェン
 Ludwig van Beethoven (1770-1827)
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 作品18-3
String Quartet in D major Op. 18 No. 3
Ⅰ:Allegro
II:Andante con moto
Ⅲ:Allegro
Ⅳ:Presto
1stヴァイオリン :宮木 義治
2ndヴァイオリン :熊田 千穂
ヴィオラ :橋本 喜代美
チェロ :森田 尚美
ベートーヴェン
 Ludwig van Beethoven (1770-1827)
フルート、バソンとピアノのための三重奏曲 ト長調
Trio for Flute, Bassoon and Piano in G major
Ⅰ:Allegro
II:Adagio
Ⅲ:Thema andante con variazioni
フルート :渡邊 真紀
バソン :瀬尾 哲也
ピアノ :嶋田 法子
< 休憩 ~ Intermission ~>
シューマン
 Robert Alexander Schumann (1810-1856)
幻想小曲集 作品73
Fantasiestucke Op. 73
1:Zart und mit Ausdruck
2:Lebhaft, leicht
3:Rasch und mit Feuer
クラリネット :橋本 頼幸
ピアノ :手嶋 有希
ライネッケ
 Carl Heinrich Carsten Reinecke (1824-1910)
クラリネット、ホルンとピアノのための三重奏曲 変ロ長調 Op. 274
Trio for Clarinet, Horn and Piano in B flat major Op.274
Ⅰ:Allegro
II:Ein Marchen. Andante
Ⅲ:Scherzo. Allegro – Trio I. Un poco piu mosso
– Trio II. Un poco piu tranquillo
Ⅳ:Finale. Allegro
クラリネット :橋本 頼幸
ホルン :杉村 由美子
ピアノ :木田 淳
- Program Notes -
弦楽四重奏曲 第3番 作品18-3
ベートーヴェン

 

 ベートーヴェンの弦楽四重奏曲作品18は6曲あり、第3番は最初に完成した曲とされる。作曲時のウィーンでの楽しい生活を思わせる、希望と屈託のない明るさに溢れている。1楽章は冒頭の印象的な七度の跳躍(ラ→ソ)が随所に展開する。2楽章の第1主題は緩やかに2ndVnから始まり、その後1stVnがオクターブ上で優雅な全貌を示す。第2主題(ヘ長調)が続き、その後不安を感じさせる変ニ長調に転じる。3楽章は長調と長調の間に短調を挟んだ三部形式でスケルツォに近い。4楽章はジーグのような八分音符を刻む1stVnのソロで始まり、続く2ndVnに三度高い音を重ねる。ビオラとチェロの第1主題の動機から多彩に展開、チェロの第2主題にバイオリンが第1主題のリズムで対位を奏し再現部を経て、徐々に音を弱め、長い休符で曲が終わる。 (C.Kumada)
フルート、バソンとピアノのための三重奏曲
ベートーヴェン

 

フランツ・アドルフ・ベルワルドは1796年生まれのスウェーデンの作曲家です。若い頃は王立管弦楽団のVn奏者をしつつ作曲活動をしていましたがあまり認められず、留学先のベルリンで生計のために整形外科医を開業したり、スウェーデンに帰国してもガラス工場の共同経営者をしたりしながら活動を続けた苦労人です。皮肉なことに音楽以外は早々に成功し、やっと音楽での評価を受けたのは晩年でした。その後に続いたスウェーデンの作曲家達には同国の「最も独創的で近代的な作曲家」とされ、北欧的感性の息づく作品達は高い評価を受けています。1819年作曲の若き日のこの作品は、当時の保守的な音楽界には早すぎたようですが、ロマン派時代の曲でありながら現代の北欧音楽にも通じるような雰囲気を感じていただければと思います。(T.Seo)
幻想小曲集 作品73
シューマン

 

この曲はシューマンが36歳の時にクラリネットとピアノのための室内楽曲として作られたが、ヴァイオリンやチェロと演奏される事も多い。3連符の伴奏部と八分音符の旋律部の絡みが重要で、特に1楽章と2楽章はシューマンらしい情緒的で繊細な雰囲気を、リズムに気を付けて演奏したいと思っている。小説家を目指していた父親の家庭に生まれた事もあり、彼は幼い頃から小説や詩に関心を持ち、特に詩人ハイネに影響を受けている。また、内向的な性格や病的な精神状態からか彼の曲にはどこか物悲しげな和音や深く美しいフレーズが多いが、この『幻想小曲集』も同様で、小品ながらも味わいの深い曲である。 (A.Teshima)
クラリネット、ホルンとピアノのための三重奏曲 作品274
ライネッケ

 

カール・ライネッケは19世紀ドイツに生きた音楽家です。ピアニスト、指揮者、音楽教育者、作曲者として活動し、1910年に85才で亡くなりました。この三重奏曲が作曲されたのは1905年、日本では日露戦争が起きた年です。当時のドイツは明治時代の日本が発展のお手本とした国でした。冒頭、ホルンが演奏するテーマは何度も出てきますが、工夫が凝らされており同じものはひとつとしてありません。2楽章は「tale」という副題がついています。私たちが昭和の時代を懐かしむように、古き良きドイツの昔話を聴いているような感じでお楽しみください。一転して3楽章は3人の一瞬の攻防が見ものです。4楽章はロック音楽みたいにリズムがかっこよく、新しい時代が来ていることがわかります。全て演奏すると30分ほどの長い曲です。最後までお楽しみ頂ければと思います。 (Y.Sugimura)
- Members -
宮木 義治(Yoshiharu MIYAKI); ヴァイオリン
みんなで楽しく合奏しようと やさしい助言で弦カルレディース取り纏め き帳面な性格は譜面の文字にも表われる ようこそ皆様、本日の演奏会へ しっかりとベートーヴェンの弦楽四重奏を は るの昼下がりにお届けします。几帳面な音は、年月を経て深みを増し、今日このひととき皆さんを楽しませてくれることでしょう♪
熊田 千穂 (Chiho KUMADA); ヴァイオリン
飄々としているようで実は音楽に対する熱い想いを内に秘めているちほりん。練習時も弾き方や曲の感じ方に対しての的確な指摘で、はっとさせられることが多々ありました。正確なリズムと音程でベートーヴェンのハーモニーを支えるちほりんにぜひご注目ください!
橋本 喜代美(Kiyomi HASHIMOTO); ヴィオラ
優しい笑顔で周りのみんなを癒してくださる橋本さん。息子の学校の保護者美術部では油絵を描かれ入選するほどの腕前。部では憧れの先輩でありながら、意見を求めると的確にアドバイスをしてくださいます。絵を描いたりヴィオラも弾いちゃう多趣味な方です。
森田 尚美(Naomi MORITA); チェロ
いつもその場をパッ!と明るくしてくれるふくちゃんさん。謙虚で優しい人柄はチェロの音や演奏にも。もっと出しゃばっちゃってください(笑)日々のストレス発散は韓国ドラマを観る事だそうですが、本番が終わればもっとハマれそうですね♪
嶋田 法子(Noriko SHIMADA); ピアノ
つくねさん、こと嶋田さん。呼び名の由来は何度か聞いた気がするが、いつも酒の席なので覚えていない。つくねさんは関東ご出身、英語堪能、リビングにはグランドピアノの超セレブ。だのにどんな関西人よりコテコテっぽい気がしているのは私だけじゃないはず。
渡邊 真紀(Maki WATANABE); フルート
まき2(「まきまき」と読みます)とは知り合ってもう20年以上経ちますが、しっかりしているのか、抜けているのか、未だによくわからない不思議な人です。確かなのは、美しい音色のフルート吹きだということ。一緒に演奏していると幸せな気持ちになります。
瀬尾 哲也(Tetsuya SEO); バソン
せをさんは2008年から連続12回目の出演となります。出演者としてのみならずあらゆる面から支えです。練習には出張先で仕入れたお菓子を持参してくれます。今般「ファゴット」から「バソン」に完全変態を成し遂げ、さらにパワーアップして演奏面・運営面ともに柱になっていただけることでしょう。
手嶋 有希(Aki TESHIMA); ピアノ
ピアニスト3人の中で1番優しい音色を持つ手嶋さん。しかし、曲を弾きながら一瞬で譜面をめくるという得意技が!来年からはバリバリ弾きますよ~と大曲への復帰も宣言しているのでその技になかなかお目にかかれませんが、まずはその甘い音色をお楽しみあれ♪
橋本 頼幸(Yoritaka HASHIMOTO); クラリネット
『まだまだ高校生とタメで話せる』パパさんこと橋本さん。多忙ながら配信されるドラマ・映画・その他諸々のレビューは皆の楽しみ。「僕だって水面下は足をバタバタしている」と聞いたが、優雅なクラリネットの音色からは全く伺えない、周りを引っ張る我らが大黒柱です。
木田 淳(Jun KIDA); ピアノ
木田さんは今回ライネッケで初登場。普段は子育て中の主婦とピアノの先生をされて毎日お過ごしです。気さくで柔らかい物腰の素敵マダムという雰囲気なのに、いざピアノを弾かれるとその力強さにびっくり!ご来場の皆様の心が揺さぶられること間違いなしです。
杉村 由美子(Yumiko SUGIMURA); ホルン
はーちゃんこと杉村さんは日夜アグレッシブに東奔西走。東にホルン不足に悩む母校オケがあればお手伝い、西のオケや吹奏楽団、ホルンアンサンブルでも八面六臂のご活躍。茶会やおいしいもの巡りもぬかりなく、今日の難物ライネッケとの対決も快刀乱麻を断つ?
一瞬でも輝けるのは素敵なことです。
でもそれは特別なことではない、
と信じています。
皆さんにもそんな瞬間あるでしょ?
輝くことは、天才だけに許されたものではないはずです。
日々の積み重ねの延長にしか